佐内正史 ただ、撮るということ part1 -写真集『生きている』より

佐内正史の代表的な写真集『生きている』『Chair Album』の魅力について2回にわたりお送りします。

@Gallery TAGBOAT 提供記事

このサイトを見ている方なら、アートを見に行く機会は多いと思う。しかし、実際に買って楽しむ機会はまだまだ身近になっていないのではないだ ろうか。この特集コーナーでは、国内最大級のオンラインショップである@Gallery TAGBOATより、実際にアートを買って楽しんでいる人の姿や、話題となっている作家やギャラリーを紹介していく。

佐内正史「生きている」より 《鳥》先日、某ギャラリーで見せてもらった佐内正史の空の写真が忘れられない。「一枚の写真」という雑誌の企画でもあれば、今の僕は迷わずこれを選ぶんじゃないだろうか。

僕が最初に佐内正史の写真を知ったのは『a girl like you 君になりたい』という写真集だった。宮崎あおいが表紙で、さまざまな若手女優のポートレート写真が載っているのだがその表紙がいつまでも記憶に焼きついて いる。宮崎あおいがどこにでもいる少女のように商店街の店先を通り過ぎようとする瞬間を押さえたカットなのだが、宮崎あおいを撮っているわけではないとでも 言うような、風景に自然に溶け込んで、彼女が「ただ、その時そこにいた」感じなのだ。写した、というよりたまたまそこに写っていた、とでも言うような。

佐内正史「生きている」より 《標識》佐内正史のファンの間でもとりわけ人気の高いデビュー写真集『生きている』。 写っているのは標識のアップ、マンションの階段、ドアノブ、道の曲がり角などで、一見意味不明だ。最初に見たときは、何だコレは、何を撮っているんだとずいぶん戸惑った。けれど、写真集を見終わるころには、別の気持ちにとらわれていたのを思い出す。そこで写っているものが何かということより、そこで漂っている、かもし出ているこれは、何なんだろう。

僕も写真を撮るのが好きで、たまに街を歩いてファインダーをのぞき、思いつきでシャッターを切るが、それは何か分からないが撮りたいと思わせる瞬間があるせいである。だが自分で撮っていながらその、今撮りたいと思った自分の感覚が果たして何かがわからない。写真を撮る人ならそういう気持ちってわかる のでは。

その、何か。

佐内正史の写真を見ていると、それの答えがあるような気がしてならない。

フィルムに焼き付けたいのは、対象ではなく、感覚。佐内の空の写真を見たときに惹きつけられたのは、きっと自分が空を見上げたときに感じるもの、それが切り取られていたからだ。


Yohei Yasuda 安田洋平

 地図好き。ブラジル音楽好き。アート好き。
仕事は編集者。ライター。アートと、福祉と、不動産に関わった仕事をしています。
アートに関しては、
僕の書いた記事がきっかけのひとつとなって、お気に入りのアート作品を持つ人が増えてくれたら幸せです。

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