磯辺行久 「Summer Happening」

時代の移り変わりと共に作風に変遷が見てとれる活動家

poster for Yukihisa Isobe

磯辺行久 「Summer Happening」

清澄白河、両国エリアにある
東京都現代美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2007-07-28 - 2007-09-30)

In Main Article 3 レビュー by yumisong 2007-09-06

 磯辺行久は一人ではない。というのはウソですが、まるで一人の作家の展覧会とは思えません。

磯辺行久は若い頃から瑛九(えいきゅう)のデモクラート美術協会などに参加した前衛的な作家で、60年代に活躍した後、渡米して環境計画を学んでい ます。 なので前衛の60年代の作品と、環境計画を学んだ70年以降の作品は、まるで別の作家の展覧会の様子をていしてします。高校生の頃に参加したデモクラート 美術協会は、画壇などの組織に反抗すると共に、大きな意味でそれらへの依存心を拒否する集まりだったようなので、美術家だけでなく写真家や編集者・政治運 動家など様々なジャンルの人が集まっていたようです。

会場風景

まず展示会場に入ると、その時代に制作していたリトグラフやワッペン型の作品が圧倒的な数で並んでいます。ワッペン型は「これは…国旗かな?」とか 「ワッペンというより、ポケットみたい。」と、いろいろなバリエーションです。ワッペン型の素材はミクストメディア(複数の素材)で出来ていると書いてあ りますが、よく見るとセメントも見えます。今の時代で同じような作品を作る作家なら、違う素材も選択したんじゃないかなと、そのマテリアルから時代が少し 顔を出したようでした。

ここでの作品群のタイトルは「untitled(無題)」ばかりです。自分の作品に「めんどくさいから…」「何をつけて良いのかわからないから…」 と「untitled(無題)」をつけてしまう作家もいますが(あ、私か!?)「untitled(無題)」はこのようなミニマルな作品に対して有効な効 果を持つタイトルです。先輩方が付けているからと、むやみに真似をするのはやめようねと、以前に教えて頂いたことがあります。ふむふむ。このようなミニマ ルな作品群から「untitled(無題)」が出てきたのねと、うっすら考えながら作品の反復運動を楽しみました。

そして箪笥の作品群の部屋になります。ここでは触って体験できる作品もあります。「わーい!」と子どもたちも一生懸命に扉を開け閉めしていました。

ここら辺までは、60年代のミニマルや前衛といった時代の流れと共に制作をしている様子が伺えます。

エア・ドーム内部そ して吹き抜けのフロアに出ると、デーン!と大きなビニールハウス…じゃなくて、エア・ドームが待ち構えています。日本でもおなじみのエコロジカルなイベ ント、アースデイ。アメリカでの第一回目(1970)のアースデイで発表したエア・ドームを再現したそうです。エア・ドームの中では当時の映像が、環境音 と共に流れています。当時のアメリカのアースデイは2000万人以上もの人々が参加したり、連邦議員も検討会に参加できるように休会になったりと、全米的 な環境への関心の高さが伺えます。

日本の1970年といえば、よど号ハイジャック事件、三島由紀夫の割腹自殺などを思い出しますが…60年代に問題になったイタイイタイ病や水俣病な どの公害の社会問題化で1971年に環境庁ができます。アメリカや日本だけでなく高度成長のしわ寄せのような公害があったからこそ、環境の大切さに人々の 関心が 向いた時代だったのかなと思います。

そういった時代の流れにあわせたように、磯辺行久はペンシルヴァニア大学で環境計画を学び、環境計画家として活動を始めてきます。それらのスケッチや計画プラン・資料や越後妻有トリエンナーレの映像などが展示会場には並べられています。

サンクンガーデンから建物を望むま た展示会場外のサンクンガーデンでは美術館の壁面を使った大きなインスタレーションが見れます。埋立地の美術館らしく、海抜などのサインが壁面にされてい ます。欲を言えばちょっとフォントが長体になってるかな…と気になりましたが、この場でしかあり えない想像力をかきたてるインスタレーションだと思います。そうそう、この美術館は建築物よりも土地の基礎を作るほうが大変だったんだよね、と一緒に観て いる人とお話をしながら暑い空の下で水の中にもぐった気分になりました。

yumisong

yumisong. ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → http://yumisong.net ≫ 他の記事

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