ピピロッティ リスト:からから

湿度のある生々しく可愛らしい作品たち

poster for Pipilotti Rist

ピピロッティ・リスト 「Karakara」

東京:その他エリアにある
原美術館(東京)にて
このイベントは終了しました。 - (2007-11-17 - 2008-02-11)

In Main Article 2 レビュー by yumisong 2008-02-04

I Couldn’t Agree With You More (1999) audio video installation原美術館で「ピピロッティ リスト:からから」を観てきました。

何か面白いものが観れるんじゃないかと、カラカラと乾いた欲望が音を鳴らし、私は前のめりぎみに会場へと向かいました。美術館近くの小道に入ると、同じような音を出しそうな人たちが期待に満ちた表情で同じ方向へと歩いていました。

Ever Is Over All (1997) audio video installation私が初めてピピロッティ リストの作品を観たのは、1997年のベネチアビエンナーレ。《Ever Is Over All》は、無邪気さと残酷さが混ざったようなビデオインスタレーションで、私はいっぺんでピピロッティ リストの作品が気に入りました。今回も《Ever Is Over All》は展示されており、久しぶりに同じような衝撃を受けました。ピピロッティ リストの作品は、どれも生々しくも可愛らしいです。そして、私たちを湿度のある妄想力の世界に浸してくれます。

Apple Tree Innocent on Diamond Hill 'Apfelbaum unschuldig auf dem Diamantenhügel' (2003) video installation《Apple Tree Innocent on Diamond Hill<Apfelbaum unschuldig auf dem Diamantenhügel>》は、モビールタイプの作品。吊り下げられたプラスチックのパッケージ(商品の透明プラスチック容器)たちに淡い映像が投影され、その反射が壁面をクラゲのように漂います。その透明で淡いクラゲの中に、観客である私たちの影だけがハッキリと黒く存在しています。

そんなビデオや工業製品をモチーフにしている作品たちは、決して自然素材とは言えないのですが、その雰囲気は人工的な色ではなく、生肉のピンクを連想させ、湯気さえ感じられます。けれど、やっぱりどこかよそよそしくも感じられます。その相反する感覚は、まるで「女の子」みたいです。「女の子」は性別ではありません。「女子的な可愛らしさ」という妄想(文化!?)を体現して初めて「女の子」と認識されます。けれどやっぱり妄想だけでは存在しきれない人間的なエグさというか、生々しさも共生してしまうのが「女の子」の宿命です。

ピピロッティ リストはその相反する感覚を、そのまま作品に重ね合わせることに成功しています。それは女性アーティストだから「できる」ことなのか「しなければ」ならなかったのか、わかりません。このような女性性というのは、(女性にとっても)決して全てを否定するものではないと思います。「女性の自立」と謳って、ヘンテコな平等を押し付けられるより、異質はそのまま異質として楽しめるような社会の方がよっぽど「自立」しているような気がします。

一つに方向付けるのではなく、複雑な感覚のままで軽やかに別の世界に連れて行ってくれる作品たちを堪能し、私は冬の寒い帰り道を散歩しながら帰りました。

yumisong

yumisong. ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → http://yumisong.net ≫ 他の記事

コメント

Instagram

人気記事

TABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Tokyo Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Tokyo Art Beat (2004 - 2017) - About - Contact - Privacy - Terms of Use