公開日:2008年3月4日

FABRICA LES YEUX OUVERTS 将来を見据えた目

ベネトンが贈る「ファブリカ」の展覧会が日本に上陸

天井から吊り下げられた雑誌「COLORS Notebook」の展示
「ファブリカ(FABRICA)」とは、‘94年にベネトンが設立したコミュニケーション・リサーチセンター。文化とビジネスを融合させ、タブーを設けず、革新的かつ国際的に情報を伝えることを活動目的とするこのセンターは、イタリア・ヴェネチア郊外にあり、世界中からクリエーターを迎え入れて作品の制作支援を行っている。

エントランスに設置されているのはファブリカのイメージギャラリー。麻薬、エイズ、宗教、時事問題を扱ったヴィジュアル作品が並ぶ。これらはWHOや国境なき医師団などのためにファブリカが手掛けたもの。
ファブリカの活動に着目したパリのポンピドゥー・センターは、’06年にファブリカ制作の作品を一堂に会して紹介する「FABRICA LES YEUX OUVERTS」展を開催。そしてこのたび、巡回展となって日本に上陸した。

展示作は写真、ビデオ、インスタレーション、映画と形態が様々。なかでも、会場内中央に天井から紐で吊り下げられた何冊もの雑誌「COLORS Notebook」の展示は象徴的だ。

これは国境なき医師団との共同による企画で、全ページが白紙の状態の「COLORS Notebook」3000冊が世界各国に送り届けられ、現地のアーティストや一般の人々の書き込みによってできあがった作品。各地からファブリカに送り返された1000冊のノートブックのなかから選ばれたものが展示される。

中国の囚人、南アフリカの子供たち、カナダの聖職者、宇宙飛行士、様々な国の様々な人による自由な書き込みを、来場者が実際に手に取り、ページをめくって観賞できるようになっている。

国境、文化、社会的立場、性別、年齢、タブー、社会的なあらゆる枠組みを超えたところでなされるコミュニケーション。ここに、ファブリカの理念そのものが集約されている。

展覧会の原題「Les Yeux Ouverts」を直訳すれば、「見開かれた目」という意味。固定概念や決まった価値観に捕らわれず“心を開いて”というニュアンスにも読み取れる。来場者が参加できる対話型の展示作は複数あるので、五感をフルに使って体験してみてほしい。

We are the time. We are the famous  (2005) ©Andy Cameron, Hans Raber, David McDougall, Oriol Ferrer Mesía / Fabrica
We are the time. We are the famous (2005) ©Andy Cameron, Hans Raber, David McDougall, Oriol Ferrer Mesía / Fabrica
来場者を「アクション」に誘うインスタレーション。一定の短い時間、同時に2通りのポートレートを見ることができる。一方は静止画像のポートレート、もう一方は連続映像によるポートレート。

Aie Shimoguchiya

Aie Shimoguchiya

東京都出身。ライター/文筆業。「スタイリッシュ・シネマ」を連載。 <a href="http://fashionjp.net/fashionclip/stylishcinema/">http://fashionjp.net/fashionclip/stylishcinema/</a>