ヴィック・ムニーズはアーティストですが、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のコレクションから作品を選んで展示する「アーティスト・チョイス」展のゲストキュレーターとして選ばれるようなキュレーション力の持ち主でもあります。なので本展はアーティストの作品だけでなく、企画者が発する全体のメッセージ「Haptic -触覚」に耳を澄ませながら体験するとより楽しめるかもしれません。
エリカ・ヴェルズッティの展示は、子どもが作った動物園のようです。重心が危ういものたちがバランスを崩しそうで崩さずに、ぽつぽつとただずんでいます。それらは左上の拡大写真にあるように、既製品などの組み合わせで出来ていて、本来の物が持っていた意味とは違う意味を持つ(または意味をなくしてしまう)作品を制作していました。「いつもは生野菜を使っているけれど、今回はオモチャの野菜を使ってみた。」と言っていました。彼女の作品は東京都美術館で開催中の「ネオ・トロピカリア:ブラジルの想像力」展でも見ることができます。
左写真は本人…ではなくて、本人の木彫。背中には和風の青いタトゥーがありました。本人の両腕にもTシャツの袖から覗いていましたが、ご自分でデザインしたのでしょうか?右写真は木彫ではなく、ホンモノのアーティストのエフラインとキュレーターのヴィック。最初に本展のアーティストとして声をかけたのが、エフラインだそう。日本人アーティストはTWS側から渡されたファイルでの選考だったので、(日本人の名前に馴染みがないので)男性だか女性だか判断できなかったそう。結果、男性アーティストは一人になってしまって…幸せだと言っていました(笑)。
宮永愛子はタンスの防虫剤などに使われるナフタリンを素材として作品を作っています。今回は、初の試みとして作品の「型」も展示しています(写真右下)。今まで作ったことのない大きな形の旅行鞄です。そして今までとは違って、形が取れなかったようです。崩れてしまった鞄に鍵を添え外国の新聞を貼ることで物語性を出し、作品として完成させています。一緒のスタジオだったエリカのどんどん形を変えていく制作方法に影響を受け、予定通りにならなかった時のやり方を学んだと言っていました。
長井朋子は展覧会初日だからか人が多いからか、始終ソワソワしていました。自作品の説明も言葉少なかったですが、今回は壁に直接描くことも試みたと言っていました。スタジオ制作以外の作品も出していたので作品点数は多く、壁に描く展示方法が空間に溶け込んで柔らかい雰囲気です。展示空間の作り方として成功していると感じました。
レダ・カトゥンダは、自国の素材や日本でよく通った東急ハンズでみつけた素材を組み合わせて一つの平面にしています。全体を見た時と一つ一つの素材を見たときの印象が違います。最初に紹介したエリカと同じように、作品の意味(または意味のなさ)と、もともとが持っていた物の用途や意味が同時に感じられる作品ですが、組み合わせの接合部分の仕掛けなのか全体の色調の仕業なのか、個々のマテリアルが何か特別な思い出や物語を持っているような雰囲気をかもし出していたのが印象的です。
また本展はTWS青山で滞在制作されたもので、その様子は「TWS青山:OPEN HOUSE 2008-05」にフォトレポートがあります。
yumisong
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