公開日:2012年7月4日

Tokyo Art Map ミニ企画「その土地に根ざしたものづくり」

陶器の街、益子から馬喰町へ――スターネット東京のこだわりについて伺いました

パステルカラーが春らしいTokyo Art Map 3-4月号の表紙は、ちょっと不思議な構図です。
丁寧に掛けられた真っ白なシャツ、大きく縁取られた窓、その間からのぞく2人の女性―—さて、ここはどこでしょう。

陶器で知られる栃木県益子町で、ストアやギャラリーを運営するスターネットが、2011年2月、東京・馬喰町に店舗をオープン。今回は、その東京・馬喰町の店舗で表紙撮影にご協力頂きました。

インタビューさせていただいたのは、スタッフの関恵理子さんです。スターネットの活動やこだわり、地域や人との関係づくりについて伺いました。

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棚に並ぶ鞄や靴はすべて作家によって手作りされたもの
スターネット東京(2F)

▼まず、スターネットの活動について教えてください。
陶器・食べ物・洋服の3つを柱に、それぞれ自然素材をつかって地域に根ざしたものを提供しています。皮や鉄、陶器の作家さんと組んで、スターネットオリジナルのものを発信するために、一昨年は「Art Workers Studio」という独自の工房をつくりました。

▼CDの取り扱いもあるようですね。
はい。うちのオーナーの馬場浩史がディレクションして、アーティストと共に当店のイメージを「音」にしたものです。他にも、化粧品や洗剤などといった生活用品も取り扱っていますよ。

▼スターネットは益子のライフスタイルを発信していくという側面もお持ちですが、伝えたい益子らしさ、益子の精神とはどのようなものでしょうか。
益子では、どこの誰だかわからない人が生産・消費するのではなく、その地域で取れたものや手作りされたものを、そこで消費していくという目に見えるサイクルを大切にしております。それは益子を離れても、伝えていきたいスターネットの精神ですね。

 

今月号の表紙に使われなかったカット。フェルメールの絵画のようで素敵ですね。
今月号の表紙に使われなかったカット。フェルメールの絵画のようで素敵ですね。

▼昨年は2月に東京、4月に大阪と次々と店舗を増やしましたね。
東京店は、益子で試行錯誤してできあがってきたエッセンスを絞り込んで持ってきています。大阪への出店は、震災によって益子がダメージを受けたときに、西日本への展開を急遽考えたことがきっかけです。

▼震災から大阪店のオープンまで1ヶ月とは、ずいぶん早いですね。
そうですね、その時期はスタッフが各地に散り散りとなって動き回り、忙しかったです。でも、そのおかげで西の農家の方々など、新しい出会いがたくさんありました。ダメージを受けた益子も、まだ完全に震災前と同じ状況に戻ったわけではありませんが、だいぶ活気が戻ってきました。

▼東京店をオープンするとき、なぜ馬喰町を選んだのでしょうか。
この周辺にはCENTRAL EAST TOKYO(CET)という東東京を盛り上げることを目的とした動きがあり、建築家や不動産の方が入って、馬喰町にアトリエやギャラリーを誘致したり、アートイベントなどを空き家で行っていました。過去に、オーナーの馬場がCET関連のイベントに益子の町おこしの活動に関してゲストとして呼ばれた縁があり、物件を紹介してもらいました。いろんなギャラリーやおもしろいお店などが増えていく流れに、スターネットもご一緒させていただいた感じです。

▼お店は古い建物をリノベーションしたそうですが、どのようなところにこだわりましたか。
できるだけ元の雰囲気を残そうと、窓枠をそのままつかったり、階段のコンクリートを剥がして骨組みを残したり、元のいいものを壊さずに活かしました。

▼近隣のギャラリーとの交流などはありますか。
お互いのDMを置きあうなど、よい関係です。単独であるのではなく近くにギャラリーやお店が集まっていることで、訪れてくださるお客様も増えていると思います。


昔ながらの趣き深い階段
昔ながらの趣き深い階段
美しさと、着心地の良さを兼ね備えた服。プリント製品は手作りではない工程が入ったもの。スターネットは作り手の顔が見えることを大切に、手刺繍など、手作りのものだけを提供しています。
美しさと、着心地の良さを兼ね備えた服。プリント製品は手作りではない工程が入ったもの。スターネットは作り手の顔が見えることを大切に、手刺繍など、手作りのものだけを提供しています。

▼スターネットで扱われているプロダクトの作家さんとはどのように出会われているのですか。
作家さんがスターネットのどこかに共感してやってきて、こちらもその作家さんの作品を気に入って、何か一緒にやりましょうというところからはじまります。作家さんがお店に作品を持ってきて、それを見て採用させていただくこともあります。

▼原発事故の影響で、食品の安全性が騒がれましたが影響はありましたか。
うちは福島の食品も扱っており、安全な限り引き続き扱っていきたいと思っていました。検査をしたら安全だったのですが、お客様の反応が気になりましたね。
ただ、お客様との信頼関係も出来てきて、スターネットで扱っているものは大丈夫だろうと安心して購入してくださるようになってきたかな、と感じます。

▼農家の方や、お客さんとの関係も大切にしているのですね。
そうですね。流通の経路やエネルギーなど関心を持ち、安全や安心にこだわりをもった生産者さんや近隣のお客様との信頼関係を大切にものづくりをしています。

1Fには茶や蜂蜜などの食品が並びます。
1Fには茶や蜂蜜などの食品が並びます。

▼ゆたかな暮らしを大切にしているスターネットにとって、アートとはどのようなものでしょうか。
日々手に取る茶碗や服、音楽などからアートを感じることが出来たら素敵です。生活の中に美しさを見出せるものを提供したいと考えています。

—— ありがとうございました!
手の届かないような遠い世界の事ばかり考えるのではなく、今身近にいる人やものとの関係を大切に営むスターネットの姿勢は素敵ですね。
スターネットについては『ひかりのはこ―スターネットの四季』(渡辺尚子、アノニマスタジオ、2006年)で紹介されているので、こちらも是非読んでみてください。暮らしに対する考え方のヒントをたくさん見つけることができます。

東京店では月に一度、新鮮な食材の並ぶマルシェの開催も行っています。興味のある方は、Tokyo Art Mapを片手に、味のあるギャラリーが並ぶ馬喰町を散歩してみてはいかがでしょうか。

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[TABインターン]
清水覚子: 幼少期はパリで、現在は東京在住。大学生。三度のご飯と現代アートが好き。アートが毎日の生活の中で身近になるような仕組みづくりを考える事をライフワークにしたい。将来は中学校の先生。

Ai Kiyabu: 89年生まれ。美学を専攻する大学生。編集者目指して、雑誌「GINZA」でアルバイト中。Sputniko!展にスタッフとして参加後、アートと社会の関わりに興味を抱く。趣味はアウトドア。バッグ一つで生きていける人生を模索中。

TABインターン

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学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。