公開日:2012年9月4日

東京国立近代美術館『14の夕べ』開催中

【Art Beat News】谷川俊太郎、大友良英ら多種多様なアーティストたちが、一夜限りのパフォーマンスを繰り広げる。

伝説の「ハプニング」は夕べに起こる。

20世紀初頭の『未来派の夕べ』や『ダダの夕べ』をはじめ、『9つの夕べーシアター&エンジニアリング』に至るまで、芸術における伝説的なイベントはいつも夕べに行なわれてきた。そうした伝統を引き継ぎ、現在、東京国立近代美術館では閉館後の美術館を会場に、総勢16組のアーティストたちによる一夜限りのパフォーマンスイベント『14の夕べ』が連夜行われている。

谷川俊太郎 Photo|前澤秀登

9月8日(土)まで続く本イベント、開演前には同期間会場に出現する「BEER MOMAT」で早い時間に夕涼みを楽しむのもいい。料理家のyoyo.(VEGEしょくどう)が手がけるフードや、東京発クラフトビール・東京エール、Romana Keikoによるハーブ・ホーリーバジルを使ったモヒート、そしてCOFFEE in the HOUSE(by Little Nap COFFEE STAND)のスペシャリティ・コーヒーなどを提供。

また、同じく美術館前のオープンスペースに登場したインドの建築事務所スタジオ・ムンバイによる「夏の家」も注目したい。世界中で話題を集めるスタジオ・ムンバイはインドの住居を徹底的にリサーチし、今和次郎やジョン・ラスキン、バーナード・ルドルフスキー『建築家なしの建築』などにも共通する民俗的な建築の魅力を伝えている。日本初となる本プロジェクトでは、インドから実際に大工職人を招聘して設営された有機的なバラックを2013年1月14日(月)まで見ることができる。

パフォーマンスイベント『14の夕べ』、早速イベントに駆けつけたので、その模様の一部をお伝えしたい。

会場に入ると、イベントパンフレットが配布される。中を開くと各出演者のカードの束があり、それぞれのプロフィールの裏に何やら不可思議なメモが載っている。これは、これから始まるパフォーマンスの「スコア」であるらしい。今回の出演者は、いずれも楽譜や台本、舞踏譜、テキストといった「スコア」の存在に自覚的であるという共通項から選出された。振る舞いを規定するスコアの存在は、一回性を最大の特質とするパフォーマンスといかなる関係を結ぶのだろうか。そこでは、「パフォーマンスとはどこまで予見できるのか否か」といった問いが照らし出される。

スコアを眺めてみると、何かを予見させる示唆的なメモが並ぶ。本人以外は解読不可能なものも多いが、中には共同出演のオファーをメールした際のテキストがあり、事前にそれを読んだ鑑賞者は、その依頼内容から出演者の意図を教えられる。まるで謎かけのような「意図」が、いかに舞台に表出するかを考えながら観賞するのも面白いだろう。

谷川俊太郎 Photo|前澤秀登

古川日出男 Photo|前澤秀登

3日目の夕べは谷川俊太郎、古川日出男、福永信の3名による朗読パフォーマンスが行なわれた。福永の回では、ひとりの少女が裸足で登場し、福永の短編小説を朗読。古川は得意の演技力で絶叫にも近い迫力に満ちたパフォーマンスを見せた。谷川は談笑を交えながら自らの詩を一遍ずつ披露。自身がアメリカで発表した現代詩朗読の経験から、日本語独特の語感や音の面白さを伝え、ぐいぐいと「言葉の朗読」の魅力に引き込んでいった。

<出演者>
8月26日(日) 東京デスロック
8月27日(月) 福永信/古川日出男/谷川俊太郎
8月28日(火) 奥村雄樹
8月29日(水) No Collective
8月30日(木) 手塚夏子
8月31日(金) 高嶋晋一
9月1日(土) 小杉武久
9月2日(日) 大友良英 one day ensembles
9月3日(月) 神村恵カンパニー
9月4日(火) core of bells
9月5日(水) 小林耕平
9月6日(木) 村川拓也
9月7日(金) 橋本聡
9月8日(土) 一柳慧

■国立近代美術館ウェブサイト 14の夕べ / 14 EVENINGS

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