公開日:2012年10月31日

舞台芸術の祭典、フェスティバル/トーキョー始動!!

【Art Beat News】震災後の日本で、舞台芸術はいかなる「ことば」を発するのか?

第5回目となる日本最大規模の舞台芸術フェスティバル「フェスティバル/トーキョー(F/T12)」がスタートした。国内外から先鋭的なアーティストや演出家が集結し、その場限りのパフォーマティブなプログラムが期間中に次々と繰り広げられる本祭典。社会や時代の壁に真っ向から挑む挑戦的な作品やクリティカルな表現を数多く集め、各演目は開催の度に大きな話題を集めている。今回、「ことばの彼方へ」というコンセプトを掲げたF/T12では、震災後におびただしい情報やことばが渦巻く日本において、演劇表現から発せられる「ことば」の更なる先を追求する。

ジャン・ミシェル・ブリュイエール/LFKs《たった一人の中庭》

ジャン・ミシェル・ブリュイエール/LFKs《たった一人の中庭》

フランスから来日したジャン・ミシェル・ブリュイエール率いるLFKsの作品《たった一人の中庭》では、会場であるにしすがも創造舎全体に実際の「移民キャンプ」が出現。展覧形式の本作品では、会場の至るところで期間中実際にキャンプ生活を演じ続けるパフォーマンスが繰り広げられる。体育館いっぱいに並んだ金属製のベッドが奇妙に動く壮大なインスタレーションのほか、白い大きなテントの中では「移民ひとりのための理想のキャンプ生活」が行なわれ、ある痩せこけた黒人男性ひとりに対し、複数人が料理を施し、診察をする様子などを観客は目撃することになる。
ここでは実際のフランス国内の移民キャンプの実態を暴くべく、メディアでは報じられない複雑な現実を現前させることで、観る者の知覚を直接刺激する体験をつくりだす。また、本作のパフォーマーLFKsは哲学者、医者、詩人、役者などで構成された集団であり、彼らから発する独特の空気感も本作品の魅力のひとつだ。


高山明《光のないⅡ》

公演発表の度に話題を呼ぶ奇才の演出家、PortB 高山明の作品《光のないⅡ》は、3.11以降の福島の状況に大きな問いを投げかける問題作だ。2011年9月、エルフリーデ・イェリネクによって発表された戯曲を元に、高山は東京の都市空間を福島に見立て、フィクショナルな福島ツアーを敢行する。見慣れた東京の風景が仮想のフクシマにすり替わる瞬間、東京と福島を繋ぐアクチュアルな関係が生まれてくるだろう。

ほかにも最高質の作品が次々と展開されているF/T12。《たった一人の中庭》をはじめ、ほとんど再演不可能な作品を観ることができるのは、この期間のみ。ぜひお見逃しなく。
フェスティバル/トーキョー ウェブサイト


執筆:塚田有那

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