公開日:2013年12月10日

「天上の舞 飛天の美」展

軽やかに宙を舞う、古の飛天と六本木で出会う。

11月23日からサントリー美術館で開催されている、「天上の舞 飛天の美」展の内覧会に行ってきました。今回の展覧会は、仏教美術の中でも「飛天」という存在に焦点を当てているユニークな展覧会。学芸員の方曰く、サントリー美術館の高さのある空間を生かす展示ということを踏まえて企画されたそうです。そして、今回は平等院の特別協力で、修理中の鳳凰堂から国宝である飛天がやってきており、その中には寺外初展示のものもあります。

国宝《雲中供養菩薩像》天喜元年(1053)平等院
国宝《雲中供養菩薩像》天喜元年(1053)平等院

「飛天」とは、仏の存在を讃えて(讃嘆供養)空を舞い踊る天人のこと。天衣を纏った天女を想像する方も多いと思いますが、初期の飛天には、ヘレニズム文化の影響を受けた有翼のものもいます。この展覧会では、飛天がインド、そして中国を経て日本へ伝わっていく歴史的過程を全国から集められた彫刻・絵画・工芸で辿りながら下の階へ向かうと、そこから「飛天にまつわる表現が成熟した形で集結している」と言われる平等院鳳凰堂の世界が始まります。

背景が黒いケース内にあるのが
国宝《阿弥陀如来坐像光背飛天》天喜元年(1053)平等院

この国宝《阿弥陀如来坐像光背飛天》がお寺の外に出るのは今回が初めて。更に、本展の見どころはこの飛天が目線の高さで間近に見られることです。実際にはその名の通り、鳳凰堂では阿弥陀如来坐像の光背を飾っており、高い場所に位置しているので、このような低い位置で拝見できることは非常に珍しく、二度とないかもしれません。

国宝《雲中供養菩薩像》
天喜元年(1053)平等院国宝《雲中供養菩薩像》
天喜元年(1053)平等院

また、この金色の飛天以外にも、国宝《雲中供養菩薩像》が展示されています。本展では実際に鳳凰堂壁面上部に懸けられている配置とは異なり、左右で向きを揃えて展示されており、飛天たちが浮遊してこちらへ向かってくるような感覚を来場者に体験してもらいたいとのこと。展示会場に入ると、周囲が薄暗い中、照明を浴びた菩薩像がまるで本当に浮いているかの様です。

国宝《雲中供養菩薩像》天喜元年(1053)平等院
国宝《雲中供養菩薩像》天喜元年(1053)平等院
飛天の一体一体ごとに姿、表情、仕草に個性がある。

上:《雲中供養菩薩像模刻像》
天喜元年(1053)平等院
下:国宝《阿弥陀如来坐像光背飛天》
天喜元年(1053)平等院
この他に、鳳凰堂の修理後、堂内に奉納される雲中供養菩薩像南20の模刻像が実際に触れられる形で展示されています。これを仏と縁を結ぶ「結縁(けちえん)」と言うのだそうです。仏像に直に触れる滅多にない機会がここで味わえます。(南20の原品は出陳されません。触れられるのは模刻像です。)
「飛天」という空を舞うその姿ゆえかもしれませんが、見てそして触れてみて、心が軽く穏やかになるような展覧会でした。足を運ぶ際には、ぜひ時間に余裕をもってゆっくりと堪能してみて下さい。



[TABインターン]
安田七海:東京都出身。大学院卒業後、就職したもののその後紆余曲折を経て来年から法律を学ぶ予定。アートは未知なる世界への入口と捉え、TABを活用して様々な展示へ足を運ぶ。趣味は他に読書・散歩・食。

TABインターン

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学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。