公開日:2013年12月28日

ヨコハマトリエンナーレ2014、第一弾アーティスト&展覧会構成発表!!

【Art Beat News】「忘却の海」をめぐり、5つの旅がはじまる

来年8月よりスタートする、ヨコハマトリエンナーレ2014の展覧会構成およびアーティスト第一弾が発表された。

今回の展覧会タイトルは「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。なんとも詩的なタイトルとも思えるが、こちらはアーティスティックディレクターを務めるアーティスト・森村泰昌からの提言。「華氏451」とは、レイ・ブラッドペリのSF小説『華氏451度』に由来するものであり、そこでは本を読むことも所持することも禁じられた近未来社会が描かれている。ここで森村が着目したのは、「忘却」の重み。物語の後半、焚書へのレジスタンスとして本を丸ごと記憶しようとする集団が現れるが、彼らの行為は「本という物質を記憶という非物質に置き換え、本の精神のみを隠し持とうと試みる(森村)」ものとして、その果敢なる挑戦と精神性を現代社会に引き継ぎ、この世界を認識する手がかりとして据えている。

展覧会コンセプト序文から、なんだかゾクゾクするではないか。
自民党政権による「秘密保護法」なるものが成立した現代日本社会において、ここで提示されたコンセプトは、いまの社会を生きる私たちをあらためて考える契機となるだろう。本展覧会では、「忘却」に抗う芸術表現に焦点を当て、忘却をめぐる5つの旅に鑑賞者を誘う。
ひとつめは、「沈黙とささやきの旅」、続いて「華氏451の旅」「無用への旅」「恐るべき子供達に会いに行く旅」、最後に、すべてを見終えた旅人(鑑賞者)は「忘却の海に漂流する」。

旅の要を担う参加アーティストたちも興味深いラインナップが並ぶ。
日本からは、現在、中上健次『日輪の翼』を舞台化した新作演劇を発表予定のやなぎみわ、街そのものをインスタレーションへと変貌させるようなツアー型演劇を発表し、毎年のF/T(フェスティバル/トーキョー)をにぎわせるPort Bの高山明、日常におけるささいな出来事に深い考察を与える作品を手がける和田昌宏らが登場。続く海外勢では、時間と空間をねじ曲げ、その記憶を混乱させるサイトスペシフィックな作品を数多く手がけるグレゴール・シュナイダー、第二次大戦中に空っぽになったエルタミージュ美術館でギャラリーツアーを行ない続けた男性職員の話を再現した作品を発表するメルヴィン・モティ、また、さまざまな表現者たちの「失敗作」を持ち寄り、巨大なモニュメントをつくるマイケル・ランディも注目だ。

今後も、ますます注目のアーティストが発表されることだろう。
この年末年始には『華氏451度』を読み返しながら、じっくり来年の夏へと思いを馳せるのもいいだろう。

■ヨコハマトリエンナーレ2014
公式ウェブサイト

Text: Arina Tsukada

Art Beat News

Art Beat News

Art Beat Newsでは、アート・デザインにまつわる国内外の重要なニュースをお伝えしていきます。