クレオン・ピーターソン「Into the Sun」インタビュー

変動が激しい現代社会構造における権力闘争を擬人化

poster for Cleon Peterson “Into The Sun”

クレオン・ピーターソン 「INTO THE SUN」

渋谷エリアにある
DIESEL ART GALLERYにて
このイベントは終了しました。 - (2016-05-27 - 2016-08-12)

In Main Article 1 インタビュー by Rei Kagami 2016-06-10

ディーゼル アート ギャラリーでは、5月27日からクレオン・ピーターソンの個展“Into the Sun”が開催されている。ピーターソンはLAを拠点に活動するペインターだ。これまで、ダイチ・プロジェクト(ニューヨーク)、レオナルド・ストリート・ギャラリー(ロンドン)、バウトウェル・ドレイパー・ギャラリー(シドニー)など世界各地で展覧会を開催し、2014年のアート・バーゼル・マイアミでは、グラフィティ・アーティストのシェパード・フェアリー(Obey)と、街のビル4つの壁に渡る巨大な壁画のコラボレーションを行った。

クレオン・ピーターソン

ピーターソンの絵画はどれも、ベージュ、白、黒を基調とした落ち着いたトーンで統一されている。しかし、よく見ると、描かれているのは人が人に暴力を振るっている惨たらしいシーンばかりだ。火あぶりにされる人や、木に吊るされて虐待されている人、凶器で斬りつけられている人…。
大学でデザインを学んだというだけあって、グラフィカルに構成された構図とすっきりした配色によって生々しさはないのだが、ピーターソンの創作の根底には、暴力、争い、無秩序といった人間史の負のパワーが流れている。

「僕は子どもの頃複雑な家庭環境で育ち、喘息持ちで病院で過ごす時間が長かった。その後麻薬中毒になり、刑務所と更生施設に入ったり出たりという生活を繰り返していたんだ。厚生施設を出ても、そんな自分を雇ってくれるところもなくて、見つかっても続かずまた施設に戻ったり、家も失くしたよ。社会の一員という実感もなかった。ただ、絵は物心ついたときからずっと描いていたからね。そこしか戻るところがなかったんだ」

「19歳のときに入った更生施設で、リハビリの一環として自画像を描いたんだけど、けっこう気が滅入るような、暗い自画像だったんだよね。そこを出た後もドラッグ漬けの生活を送っていて、5年後に再び同じ更生施設に戻ることになったんだけど、そのとき、その自画像がまだ壁に貼ってあったんだ。それを見つけたときはとても驚いて、俺は全然進化してないなと思ったものさ」と、何度も更生施設に出たり入ったりしていた頃のことを笑い飛ばす。

そんな生活を繰り返しながらもピーターソンは、カリフォルニア州のアート・センター・カレッジ・オブ・デザインにて美術学士号、その後デトロイトのクランブルック美術大学にて美術学博士号を取得した。再びカリフォルニアに戻って来て、あるギャラリーのためにデザインの仕事をしたところ、ぜひ作品を見たいと言われて、ギャラリーのオーナーがアトリエまで作品を見に来たという。そして、それがそのままギャラリーでの個展開催に結びつく。

「その個展で僕の作品を買ってくれた人の中にジェフリー・ダイチがいたんだ。その後、彼は僕の作品を世界中のあちこちのアートフェアに持って行った。これはすべて偶然の重なりだけど、こんなことがなかったら、画家になるなんて思いもしなかったかもしれないから、人生って不思議だなと思うよ。」

ピーターソンは現在は家族ももうけ、フルタイムのペインターとして制作にいそしんでいる。

作品の主題に暴力や闘争ばかり取り上げる背景には、自身の若き日の荒れた日々の記憶が大きく影響しているという。そして、実際に描かれている題材は、メディアの報道によって知り得る現在進行形の世の中で起きている事実を基にしている。

「シリアやイラクの情勢をはじめ、今世界で何が起きているかというニュースは常に追っているよ。最近一番関心があるのはやっぱりアメリカの大統領選だね。」

ただ、それぞれの作品の題材が具体的にどの事件や史実を基にしているかということについて語ることを嫌う。
今回初めてとなる日本での展覧会でも、特に日本を意識したトピックやモチーフを選んだ訳ではないという。

「僕の絵はいろいろな解釈ができるので、具体的な出来事を限定しないで見る人の想像力に委ねたいんだ。」

暴力や闘争に染まった世界ばかり描くピーターソンだが、暴力のない世界は実現可能か?という問いに対しては、「そうは思わない」と答える。

「技術の進歩や愛などによって世界は良くなるという考え方はあるけれど、いつの時代も、他の人より権力や影響力を持とうとする人がいて、そうすると必然的にその犠牲者、敗者というのが出てくる。その繰り返しさ。残念なことだけど、これは変わることのない人間の性質の一面だと思う。」

美術作品においても、闘いや暴力はいつの時代においてもモチーフとして繰り返し表現されてきた。「歴史は繰り返す」と言うピーターソンの作品の中にも、ダビデ像や中世の馬など、過去の美術作品への呼応といえる要素が取り込まれている。

「争い自体は暴力的でむごたらしいこともあるけれど、見方を変えると、闘いのど真ん中にいる人は、自分たちの理想の世界の実現を追求しているだけという意識だと思うんだ。だから、残念ながら争い事や暴力がこの世からなくなることはないと思うけれど、みんなその事実を受け止めて、対峙していく方法を自分なりに見つけないといけないと思うんだ。」

誰もが住みやすい世界を望んでいる。ピーターソンの作品は世の中の暗い部分に焦点を当てているが、それは決して彼が暴力を好んでいる訳ではなく、むしろ現実の世の中に対して警告を鳴らす意味があるという。

「僕の作品を見る人には、描かれた世界から現実に世の中で起きていることについて、自分なりの意見を考える機会になってほしいんだ。」

争いには、実際に血が流れる闘いだけではなくて、内面の葛藤という闘いもある。

困難な環境をくぐり抜け、ペインターとしての活躍の場を広げてきたピーターソン。その一表現者として内面の葛藤は、作品を前にした私たちにそれぞれの形で訴えかけてくることがあるのではないだろうか。

■展覧会詳細
クレオン・ピーターソン 「INTO THE SUN」
会期:2016年5月27日(金) 〜 8月12日(金)
会場:DIESEL ART GALLERY

住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F


開館時間:11:30〜21:00
http://www.diesel.co.jp/art/cleon_peterson/

Rei Kagami

Rei Kagami. Full time art lover. Regular gallery goer and art geek. On-demand guided art tour & art market report. アートラバー/アートオタク。オンデマンド・アートガイド&アートマーケットレポートもやっています。 ≫ 他の記事

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