オンラインアンケート結果発表!アートイベント、どう見に行く?

東京のアートイベント情報の現在とこれから − 2016年の東京の「Art-goer」のすがた

In 特集記事 by Sayo Tomita 2017-09-21

Tokyo Art Beatでは、数年に一度TABユーザやアートイベント(以下、イベント)に足を運ぶ人を対象としたアンケートを行ってきました(2011年2014年)。2016年は、イベントに足を運び見に行く人々=「Art-goer」の、情報収集から鑑賞後までの行動を調査するため、オンラインアンケートとインタビューからなるリサーチを行ないました。インタビューでは、イベントを開催する側やメディアなどの関係者に、広報についての取り組みや考えを訊ねました。その結果を報告書『東京のアートイベント情報の現在とこれから Tokyo Art Goers Research』より抜粋して掲載します。
2020年を控えた東京で、今後より多様な「Art-goer」がアートイベントに足を運び、その体験から豊かさや刺激を得るために、Tokyo Art Beatは発信を続けてまいります。

アンケートから見える、東京でアートイベントに足を運ぶ人のすがた

毎年実施されている、内閣府政府広報室の「文化に関する世論調査」によれば、「この1年間にホール・劇場、映画館、美術館・博物館などで文化芸術を直接鑑賞したことがある」と回答した人は59.2%とされています。映画や音楽といったジャンルも含めており、東京都区部では「直接鑑賞した」人の割合が63.3%と全国平均より高めです。
今回のアンケート回答者は、75%が関東在住。年齢別の割合では、20代が29%を占め、30代〜40代が人口比と比較すると少なくなっています。職業ではクリエイティブ系含めた会社員・公務員が56%を占め、大学生が16%、自営業・フリーランスが10%となっています。

知識を深め、大切な人と日常的にアートを楽しむ

アートイベントに足を運ぶ目的としては、各年代ともに見たい作品・作家があるという回答が最も多く集まりました。年代別の特徴として、20代までの若い世代は知識や教養を身につけるため、30代〜40代は家族や恋人と一緒に過ごすためにアートイベントに行くという回答が最多でした。また見に行く目的については、知識欲や好奇心に加えて「作品、アーティストごとに見たいものがある」からという回答が多くありました。すでに好みの作品やアーティストを見つけていて、アートイベントを見に行くことを日常に取り入れている人が多いという回答者の傾向を裏づける結果です。

ひとりで気ままに、友人・家族と。毎月イベントに足を運ぶ人は全体の6割以上!

「アートイベントには主に誰と行きますか?」という質問では、ひとりで見に行く層の多さが浮き彫りになりました。過去(2011年、2014年)のアンケートでも5割〜6割がひとりで見に行くと答えており、その傾向が現在まで続いていることがわかります。嗜好の分かれるアートイベントを、一緒に楽しめる相手を探すのが難しいと感じるのかもしれません。また、意外に多かったのは家族と行くという回答。2011年のTABユーザ向けアンケートでの1割弱から増加傾向にあり、今回は「友人と」に並びました。

東京エリアならではの回答と言えるのは、アートイベントに足を運ぶ頻度。月一回以上何かを見ていると答えた人が、66.5%にも上りました。月一回というのは、アートイベントの常連と言ってもいい層だと思います。前述のように東京に住む人の6割がなんらかのアートイベントを見に行っていて、そのうち月一回以上アートイベントに行くとすると、市民のおよそ4割がアートイベントの常連層ということになります。東京の文化度の高さを感じさせる数字と言えるでしょう。

情報源としては、アート情報ウェブサイトに次いで、Twitter、ウェブサイトでのレビューやブログ、Facebook、直接の口コミと、オンラインの口コミ系メディアが続きました。TABのサービスに限定して質問した「TABのどのメディアを一番利用しているか」の回答からも、TwitterやFacebookのタイムラインで流れてきた情報を見ていることが多いようです。特定のメディアに加えて、信頼するインフルエンサーから情報を得ていることがわかります。SNSのタイムラインなどにアートイベント情報が流れてくるなど、意識せずに情報に触れられる環境を作ることでアートイベントの敷居を低くすることができるのではないでしょうか。

ジャンルを問わず、作品の世界を狭く深く知りたい

好きなアートのジャンルとして挙げられたのは、多い順に絵画、写真、インスタレーション、次いで映像となりました。過去のアンケート結果と比べるとパフォーマンスの人気が上昇しており、より幅広いジャンルに親しんでいる人が多いことがうかがえます。

「アートイベントに足を運ぶのに以下の項目がどの程度影響しているか」という問いへの回答からは、参加しやすい「時間」と交通の便が良い「場所」での開催が、足を運ぶ際に重視されていることがわかります。それらの情報のわかりやすさも、鑑賞の後押しになるでしょう。
また内容に関しては、興味のある分野を深く学べるといった「専門性」をより重視していることが明らかになりました。アートイベントをきっかけにして、作家や時代ごとの背景などを深く知ることができると、イベントに対する満足度が高まるのかもしれません。

また、入場料への抵抗感が低い傾向にあることも、調査チームが驚いた結果でした。良いものや体験には相応の代金を払う覚悟がある鑑賞者が多いことは、イベント主催側にとっては心強い条件であり、東京のアートイベントの鑑賞者が成熟していることを伺わせます。

鑑賞の体験をどう共有し、どう残す?

見に行ったイベントの感想をどう共有するのか、は調査チームが気になっていた質問項目です。Twitter、インスタグラム、Facebookで共有する人が、全回答のほぼ半数となりました。これらの、不特定多数の人にSNSで感想を拡散していく人を「オープン派」とすると、それ以外の約3割の人は、直接会った人やLINEなどのメッセンジャーで、場合によってはコミュニケーションのきっかけとして感想を共有する「クローズド派」と言えるでしょう。

オープン派、つまりSNSで感想を共有する人々にとっては、イベントの一部でも写真撮影OKである方が、感想と共に思い出を残すことができます。また企画者にとっても口コミの効果があり、総体として利点が多いと言えるかもしれません。ネックとなるのは著作権・マナー・鑑賞体験への影響です。海外では撮影可能なアートスペースも多いなかで、日本国内でも撮影可能な範囲の限定や、会場での周知のしかたを工夫していくことが今後ますます必要になってくるでしょう。一方で、過去のアンケート結果から「共有しない」派が1割弱いることも、さまざまな楽しみ方を担保するイベントを作るためには重要なポイントだと言えます。

またイベントでの忘れられない体験を訊いた質問(自由回答)では、同行した友人や家族と、それぞれの感想を話しながら鑑賞したことが楽しかったとの回答が複数挙げられました。その一方で、作品の前で数時間過ごしてしまったというエピソードも複数見られ、じっくり自分のペースで見ることもまた、非常に深い印象を残すことがわかります。アートイベント体験に関するコメントが多数集まったことからも、「良いものを見たこと、鑑賞の体験を誰かに伝えたい」という思いをもつ人が多いいっぽう、アートを見た感想を他の人に共有したり自分のために記録を残すメディアは、映画やアニメといったジャンルに比べると少ない現状が明らかになりました。

東京で「誰が、どうアートを見に行くか」高まる関心

東京で人々がどのようにアートを楽しんでいるかという問いへの関心は高まっています。アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)は今年、都内在住の18歳~69歳の男女1100人に対し、「芸術文化体験についての実態調査」を実施し結果を公表しました。そこからは、今回TABが行ったアンケートとは異なる結果も見えてきます。例えば、この1年で1ヶ月に1回以上アートイベントに足を運んだと答えた人は23.4%と、TABアンケートの半数以下の割合でした。また、「体験・鑑賞をしない/しないと思う理由」「どのようなアートイベントなら足を運んで体験・鑑賞したくなると思うか?」の設問からは、入場料等が有料であることがボトルネックとの回答がそれぞれ4割以上あることがわかります。
また、一般社団法人アート東京の「日本のアート産業に関する市場レポート2016」は、アート作品購入やマーケットの状況から、日本国内の芸術への興味の背景を示唆しています。

アンケート・インタビューを2本の柱とした今回の調査を通じて、アートイベントに参加しやすい環境づくりは、アートイベントに関わる複数のプレイヤーが協働して実現するものだと改めて認識しました。様々な視点から現状を把握し、時に連帯してArt-goerを増やし社会に還元していくことが、いま必要なのではないでしょうか。アーティストなどの表現者やアートスペースなど、それぞれのプレイヤーの生態系が、中長期的により豊かになる方法を根本的に考えることが、これから数年の東京においては重要なのではと感じます。

TABはこれからも、アートに触れる機会のあるライフスタイルを身近にするというミッションに向け、またメディアの変化に応じて、ウェブサイト・SNSでの情報発信やアートイベント割引クーポンアプリの提供など、Art-goerたちが足を運ぶきっかけとなるサービス運営に力を注いでいきます。

<出典>
内閣府 平成28年度 文化に関する世論調査 文化芸術の鑑賞活動及び創作活動
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 「芸術文化体験についての実態調査」(リンクをクリックするとzipファイルのダウンロードが始まります)
一般社団法人 アート東京 「日本のアート産業に関する市場レポート2016」(PDFが開きます)

<調査概要>
調査方法: オンラインアンケート
調査期間: 2016年9月14日〜2016年12月12日
調査対象: 東京近郊でのアートイベントに足を運んだことがある人
回答数: 1,168

イラスト: 五十嵐哲夫

報告書冊子『東京のアートイベント情報の現在とこれから Tokyo Art Goers Research』(PDF版)のダウンロードはこちらから。
本調査は、公益財団法人テルモ生命科学芸術財団の助成を受け実施しました。

その他のインタビューはこちら
第一弾:白石正美インタビュー:アートの価値は、アートに関わる人すべてによって作られる
第二弾:倉森京子インタビュー:展覧会とは違った切り口で、美術のすそ野を広げたい
第三弾:吉本光宏インタビュー:文化の集積地・東京を体験するための、情報のプラットフォームづくりを
第四弾:平昌子 + 藤井聡子インタビュー:美術のPR・広報に、観客数だけでない評価軸を

Sayo Tomita

Sayo Tomita. 東京の西側で生まれ育ち、学生時代は美術館やギャラリーをはしごして過ごす。IT企業、大自然と大都会という環境の異なる二つのアートセンターなどを経て、Tokyo Art Beatの運営チームに加わる。アート、音楽、言葉、人、美味しいものなど、日々の新しい発見と驚きが原動力。 ≫ 他の記事

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