地方都市に芸術祭は根付くのか? 札幌国際芸術祭2017 フォトレポート

アート不毛の地と思っていた大地に広がる2017年の「芸術祭」の風景

In フォトレポート by Xin Tahara 2017-09-28

メイン会場のひとつのモエレ沼公園のガラスのピラミッド。設計はイサム・ノグチ

十数年前、北海道から東京に出てきていざ地元に帰省するたび、なんて「アート不毛の地」なのか、そう思っていた。画家を志した妹は家族の反対を押し切り、当時札幌に唯一あった美術科のある高校に進学し、その後京都の美大に行った。もし地元に帰っても、アートの仕事などできる可能性などまずないなと思っていた。広大な大地と豊かな自然と裏腹にひとつも美術大学はなく、おおよそ「ギャラリー」と呼ばれているものは郊外の木工アトリエだった。子どもの頃から野外彫刻くらいしかアートと呼べるものには触れる機会がなかったと言っていい環境だった。

北海道でこんな大規模なアートフェスティバルが開催されるなんて、ヨコハマトリエンナーレやヴェネチア・ビエンナーレを目の当たりにした10年ほど前でさえまったく思ってもいなかった。
その北海道・札幌市で「芸術祭ってなんだ?」と大風呂敷を広げたようなテーマを掲げた芸術祭が開催中だ。
この無謀にも自己撞着を招く芸術祭のテーマは、「あまちゃん」の音楽で全国区に知られるようになったミュージシャンでゲストディレクター・大友良英によるものだ。
地元ゆかりのメンバーが多い企画チームをビッグバンドに見立て、自らをバンドマスターとして市内の40箇所以上で企画を展開する芸術祭をつくりあげた。

SIAF前夜祭で音頭を取る大友良英。一般参加の老若男女にバンドマスターを譲りつつパフォーマンスした

ただし芸術祭の前面に出ているのは、バンドマスターやメンバーでは必ずしもない。
前回1回目の芸術祭は「都市と自然」をテーマに、厳選されたアーティストで主に北海道外部のキュレーターが個別の展覧会を企画し、洗練された「コンテンポラリー・アート」を札幌に紹介する体だった。
札幌国際芸術祭(SIAF)2014フォトレポート
いっぽう2回目の今回は打って変わって、参加アーティストも会場も大幅に増え、企画もパフォーマンス、音楽、ワークショップと多岐にわたる展開を見せた。
そこにいるのは、ディレクターより、アーティストより、一般参加の市民、そして鑑賞者を主体に持ってくる姿勢が見える。

クリスチャン・マークレー作品の一部はギャラリー小柳で十数年保管されていたという

大友はつねづね「他にはない芸術祭」を謳い、主体性を持った参加を呼びかける。これは近年日本各地でも自治体が観光や地域振興のために立ち上げ、乱立する他の芸術祭との差異化を図ろうとする声のように聞こえるが、実はそうではない。
そこに通底する意図は、徹底した権力構造への抗いに受け取れるのだ。
まずは芸術祭の定型のオフィシャルロゴを決めず、一定の形式にとらわれないスタンスを見せる。

参加するアーティストに対しても、「作品の説明に自分より偉い人、会ったことのない人の名前や引用をしない」ことを条件付けた。
芸術祭のディレクターが辣腕を振るい、大御所アーティストを招聘するわけではなく、毛利悠子、梅田哲也、石川直樹など大友が信をおくアーティストのつながりでのラインナップが中心にある。

大友はプロジェクトFUKUSHIMA!で福島のライブ会場に大風呂敷を敷いたとき、そこに集まったボランティア有志による制作物の光景に、なんとも言えない感銘を受けたと語る。民芸の「用の美」に近い、有名無名問わない無数の意志の塊が醸し出すアウラとも言えるだろう。

前夜祭では、大風呂敷が札幌市資料館前に敷かれた

大友自身がユニットとして参加する作品には壊れかけのレコードプレーヤーが使われており、2つの離れた会場をまたいでプログラミングされている。これは芸術祭のサブテーマ「ガラクタの星座たち」を象徴するものでもある。
毛利や梅田、そして堀尾寛太という、ガラクタと呼ばれる素材から再構成するアーティストを据え、しかしながらその関連性をもつなぎとめること、そのことが「芸術祭」として立ち現れるということだろうか。

熊の木彫りだけを集めた空間。中には砂澤ビッキの木彫りも。

北海道にあった最後の秘宝館の人形も

わずか2ヶ月足らずの会期で、大上段に構えた問いが解かれるわけではない。ただし札幌には、端聡のCAI現代芸術研究所、札幌のギャラリーとしては最古参のギャラリー門馬、弁護士でありながらギャラリーを営む川上大雅によるsalon cojicaもある。さらにこの夏、札幌駅の隣の苗穂に、巨大な共同アトリエ「なえぼのアートスタジオ」がオープンした。

改装中のスタジオ内部

行政主導ではない、参加者として、声を上げるひとがいる大地での芸術祭は、今後どう姿を変えていくのか。この週末、モエレ沼公園で大風呂敷を広げる光景に見いだせるものがあるかもしれない。

Photo: Xin Tahara

名称:札幌国際芸術祭2017
略称:SIAF(サイアフ)2017
開催期間:2017年8月6日(日)~ 10月1日(日)〈57日間〉
テーマ:芸術祭ってなんだ?
サブテーマ:ガラクタの星座たち
ゲストディレクター:大友良英

主な会場:モエレ沼公園/札幌芸術の森/札幌市立大学/北海道大学総合博物館/札幌大通地下ギャラリー 500m美術館/狸小路商店街/金市舘ビル/CAI02/札幌市資料館/札幌市円山動物園/円山公園/札幌宮の森美術館 ほか

参加アーティスト:ARTSAT × SIAFラボ/∈Y∋/五十嵐淳/イサム・ノグチ/石川直樹/宇川直宏/梅田哲也/大友良英/大友良英+青山泰知+伊藤隆之 /岸野雄一/クリスチャン・マークレー/クワクボリョウタ/Sachiko M/札幌大風呂敷チーム×プロジェクトFUKUSHIMA!/さわひらき/鈴木昭男/鈴木悠哉/タノタイガ/チョン・ヨンドゥ/都築響一/dj sniff/テニスコーツ/刀根康尚/中崎透/ナムジュン・パイク/のん/毛利悠子 他
主催:札幌国際芸術祭実行委員会/札幌市
ウェブサイト:http://siaf.jp/

■クロージングイベント
「モエレ沼公園 音楽&アート解放区」
日時:9月30日(土)10:00〜19:00
会場:モエレ沼公園(札幌市東区モエレ沼公園1-1)
※雨天の場合は10月1日(日)に延期、開催の有無は前日、当日にSNSでお知らせします。

タイムスケジュール(予定)
10:00 大風呂敷を広げる(ぜひ、ご参加ください。金槌をお持ちの方は、当日持参してください。)
12:00
・音楽 & アート解放区(出演アーティスト、パフォーマー募集)
・クロージングライブ
出演:大友良英、音遊びの会、立花泰彦、テニスコーツ、長見順、のん、ひがし町パーカパッションアンサンブル 他
・オーケストラSAPPORO 2017 final!(参加者募集)
15:30 大風呂敷をたたむ
17:30 クロージングナイト in ガラスのピラミッド
19:00 終了予定
参加費:無料。入退場自由
会場構成:札幌大風呂敷チーム×プロジェクトFUKUSHIMA!
http://siaf.jp/event/7842

■「音楽&アート解放区」出演者等大募集
上記のイベント「音楽&アート解放区」に出演して頂けるアーティスト、パフォーマー及び、大風呂敷の上で行う「オーケストラSAPPORO 2017 final!」の参加者を大募集しています。
芸術祭のフィナーレを一緒に盛り上げましょう。

1. 「音楽&アート解放区」出演アーティスト、パフォーマー募集
申込はこちら http://siaf.jp/news/8671.html

2. 「オーケストラSAPPORO 2017 final!」の参加者を募集
申込はこちら http://siaf.jp/news/8669.html

■梅田哲也オールナイトトーク
「生きているのに走馬灯」
梅田哲也と雨宮庸介のふたりが無自覚にやり取りしてきた妄想の往復書簡を下敷きに、生きながら見てしまう走馬灯のような体験を紐解いてゆくためのオールナイト・トーク・クルーズを開催します。
日時:9月30日(土)日付が変わるころから、始発くらいまで(24:00頃~6:00頃)
会場:りんごの隣(札幌市豊平区中の島1条3丁目8-19)
出演者:梅田哲也 雨宮庸介 ほか
料金:1000円(パスポート持参で500円)
申込・購入方法:後日ウェブサイトでお知らせ
http://siaf.jp/event/7442

■アーティスト・トーク(クワクボリョウタ)
展示会場(円山動物園)にて《LOST#16》を展示中のアーティスト・クワクボリョウタが作品についてのトークを行います。
日時:10月1日(日)14:00~(公演時間:30分程度を予定)
会場:円山動物園 動物園センター情報ホール(札幌市中央区宮ヶ丘3-1)
http://siaf.jp/event/7844

■《要申込》【最終回】市電放送局JOSIAF
市電そのものをスタジオにした放送局。 電車に乗りながら公開収録、同時にWEB配信もしています。
最終回は2周します!!
市電に乗りながら公開録音に一緒に参加しませんか?
1周目、2周目に乗車する方を募集しています。
日程:10月1日(日)
1周目「Time Loop Tram 99」
出演:三上拓馬、成瀬絢子(市電プロジェクトメンバー)
乗車:15:00~16:00 約60分間
http://siaf.jp/event/7450
2周目「NEXT LOOP!」
出演: 市電沿線界隈の皆さん誰かがどこかで乗り込んできます。
乗車:16:30~17:30 約60分間
http://siaf.jp/event/7451
参加費:無料
定員:20名/回 先着順

■サウンド・インスタレーション
ドット・リーム|DOT LEEM
札幌芸術の森工芸館で展示中のアーティスト・∈Y∋が、出品作品「ドッカイドー/・海・」の空間に
サウンド・インスタレーション「ドット・リーム」をレイヤーします。
光の海の道を流れる水が、共振センサーとなって音を導き空間を満たします。
日時:10月1日(日)
12:00~13:00、14:00~15:00、16:00~17:00、18:00~19:00
会場:札幌芸術の森 工芸館(札幌市南区芸術の森2丁目75)
料金:無料
申込不要。当日直接会場へ
※前日9月30日(土)は準備のため13:00で工芸館の展示をクローズします。(開館時間10:00~11:00 12:00~13:00)
※同日は、札幌芸術の森美術館を19:00まで開館します。
※当日は混雑が予想されるため、入場をお待ちいただく場合がございます。
http://siaf.jp/event/8723

■ひろがれコタンワークショップ#03
さいごもめちゃクチャ CLOSING
日程:10月1日(日)
参加:マユンキキ、五十嵐淳
会場:円山公園各所(札幌市中央区宮ヶ丘)
この日はクチャが大集合。アイヌ文化に触れるワークショップの集大成。みんなで楽しみましょう。

・前半プログラム
円山の歴史、植生、アイヌ文化をテーマにわいわい話しながら片道40分程度の円山登山をします。
登山に適した服装でお越し下さい。山頂で昼食となりますのでご持参ください。
時間:10:00~12:00 (9:45から受付)
集合場所:円山公園パークセンター
参加人数:15名程度先着
・後半プログラム
クチャ(アイヌの狩り小屋)を模したテントを立てたりけん玉、輪投げ、狩りを模した親子で楽しめるアイヌの遊び体験。マユンキキおすすめ図書や、アイヌ関係書籍を集めた青空文庫もオープン。
時間:14:00~16:00 (途中参加見学OK)
申込不要。メイン会場に直接お越しください。
https://www.kotanpet.com/event

■梅田哲也展示「わからないものたち」内ライブ 《OTACO・湿った犬》
金市舘ビル内に大規模なインスタレーション作品を展示中のアーティスト・梅田哲也の作品
「わからないものたち」の幽玄的な空間内でライブが行われます。
1. テニスコーツ in OYOYO 4DAYSに出演、OTACOのSIAFラストライブ
日時:9月30日(土)16:00~
出演:OTACO
2. ノイズ電車、アジアンミーティングに出演、湿った犬のSIAFラストライブ
日時:10月1日(日)19:00~
出演:湿った犬
会場:金市舘ビル7F(札幌市中央区南2条西2丁目1)
料金:無料
申込不要。当日直接会場へ

Xin Tahara

Xin Tahara. 北海道函館市生まれ。Tokyo Art Beat PR・セールス、ソーシャルメディア、ニュースの編集も。都内を中心に自転車でアートスペース巡りが趣味。写真と料理と多肉植物も。 ≫ 他の記事

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