北京のC.H.I 池磊(チリ)が社会に食らわす鮮やかなビンタ

米原康正がキュレーション。アーティスト・C.H.I 池磊(チリ)の個展がDIESEL ART GALLERYで開催中

poster for Chinese Cutting Edge

「中國最先端 - CHINESE CUTTING EDGE - 」展

渋谷エリアにある
DIESEL ART GALLERYにて
65日後終了

In Main Article 1 インタビュー by Sayuri Kobayashi 2017-12-06

近年異例のスピードで発展し、80・90・00年代生まれが経済や先端カルチャーを動かしている中国。その首都であり文化の中心地のひとつである北京を拠点に活動するアーティスト・C.H.I 池磊(以下、チリ)の個展がDIESEL ART GALLERYで開催中だ。ロックシンガー、写真家、デザイナー、雑誌編集長、映画監督とさまざまな分野で才能を発揮する彼の初期作品から新作までを年代順に紹介する海外個展は今回が初となる。

C.H.I 池磊と米原康正

キュレーターは、編集者、インスタントカメラを使ったフォトグラファーとしても知られ、中国版TwitterのWeiboで236万人のフォロワーをもつ米原康正。2012年に中国でチリに出会って衝撃を受けたという。

「当時はどこかで見たような作品が多くて、新しい方法論を取っているアーティストがほとんどいませんでしたが、彼の作品はエキセントリックなようで、リアリティがありました。最近は日本でも中国の若手アーティストが紹介されていますが、そのほとんどが海外にいる中国人で、外からの中国批判が多い。日本は自己批判的なものを重用する向きがあって、そういうものを持ってきて、中国が不自由で日本が自由みたいな文脈を作っているけど全然違う。今の中国の方が意識的には自由。海外に住む中国人アーティストの多くは「中国はダメ」という西側サイドのプロパガンダに使われているような気がします。それとは対照的に、彼は中国国内に住みながら、良いも悪いも含めた上でMADE IN CHINAを前面に押し出して建設的にインターナショナルなものにしようとしています。リアルな中国を表現しているんです」(米原)

ビビッドな色彩、大胆な構成、明快なコンセプトで観る者を鷲掴みにするチリの作品。本人は自身の作品によって「いま俺らが暮らしている社会とアホな奴らにでかい音でビンタを食らわしているような気分なんだ」と言うが、それは愛あるビンタなのかもしれない。

一人っ子政策が敷かれた1981年、北京南西にある河北省の省都・石家庄に生まれたチリは、幼い頃壁に描いた絵を見て息子の才能に気づいた両親に自由に育てられた。漫画家を目指していたが、中学生のときにパンクに出会い、1996年にハードコアパンクのバンドを結成。そのライブのフライヤー制作からアーティスト活動を開始した。

描いたフライヤーには、アメリカが中国の大使館を爆破した事件を参照して描いたものも

チリは自らを「生まれながらに反抗的。オヤジみたいに優秀な共産党員みたいな責任感も持ち合わせてるけどね」と言う。中国語に「怒れる若者」を意味する「憤青(フンセイ)」という言葉があるが、それがちょうどパンクと結びついたようだ。

「いろんなロックミュージシャンから影響を受けたけど、最初に買ったのはニルヴァーナのカセットテープ。海外、多分アメリカや日本から流れてきた中古のテープが15〜30元で売られていて。バンドのレコードジャケットのビジュアルにインスパイアされたりもして。中国の経済解放と同時くらいかな、ロックが解禁になった1999年にはアンダーグラウンドシーンでロックカルチャーが爆発して、俺のバンド〈昏熱症 HRZ〉も人気になったんだ」(チリ)

人物たちとテーブルを一度に撮影し、背景ほか一部を合成したシリーズ

そのうち雑誌『Rolling Stone』のアートディレクターになり、2007年には美術雑誌『O’ZINE-符号』を創刊して編集長とアートディレクターを兼任。撮影の現場で、フォトグラファーにも「憤青」のマインドを持った人間がいることを知り、カメラを手にすることになる。

「北京で一緒に食事をしたデヴィッド・ラシャペルは、後からすごいフォトグラファーだと知ったね。ガイ・ボーデンやティム・ウォーカーにも影響を受けたかな」(チリ)

「中国新人類」シリーズより

水槽にホルマリン漬けされた人間らしきものが映された「中国新人類」シリーズは、写真を合成した作品。毎日満員電車で通勤するうちに吊り革につかまるための腕が背中から生えた人、やることが多すぎて手が増えた子どもなどが表現されている。

「中国の社会問題やそれを象徴するような事件から発想することが多いけど、世界の先進国に共通することでもあるんじゃないかな」(チリ)
「国産精神病者」シリーズより

写真とコラージュによる「国産精神病者」シリーズでは、税金で肥えた政府の幹部、腕章によって官僚のような階級制度の中に置かれている小学生などが描かれている。

「Real Fake」シリーズより

最新作は「Real Fake」。カラフルでファッショナブルなイメージは過去の作品に通じるが、ここに自分で撮影した写真は使用されていない。百度(バイドゥ;中国最大の検索エンジン)から引っ張ってきた、中国にあふれる「絶対偽物」と分かるイメージを背景に、ファッションショーやアダルトビデオなどからキャプチャーした人物を重ねている。

「写真を撮ることの意味を考えたら自分で撮らなくてもいいんじゃないかってなって。昔の作品はストーリーを語るようなものだったけど、今は気楽に笑えるシンプルなものがいいと思うんだ。今制作してる映画もそういうスタイルにしたい。ヨネちゃん(米原)にも出てもらう予定だよ」(チリ)

インスタレーション風景

■概要
タイトル:中國最先端 – CHINESE CUTTING EDGE –
アーティスト:C.H.I 池磊(チリ)
キュレーター:米原康正
コーディネイター:CULTURE CLUB ’75
会期:2017年11月17日(金) 〜 2018年2月14日(水)
会場:DIESEL ART GALLERY
住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
TEL:03-6427-5955
開館時間:11:30〜21:00
入場料:無料
休館日:不定休
ウェブサイト:www.diesel.co.jp/art

Sayuri Kobayashi

Sayuri Kobayashi. 雑食系編集/ライター。ヴェネチア・ビエンナーレ、恐山、釜ヶ崎のドヤ街、おもしろいものがあるところならどこへでも。 ≫ 他の記事

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