【インタビュー】双子のアートユニット、HAMADARAKAが誘う「楽園」への招待

ペインティング作品約30点、浮遊する立体作品が渋谷・DIESEL ART GALLERYを彩る

poster for Hamadaraka “Edendordorado – Resonance of Paradise”

HAMADARAKA「EDENDORDORADO -楽園の物音- 」

渋谷エリアにある
DIESEL ART GALLERYにて
このイベントは終了しました。 - (2018-08-31 - 2018-11-15)

In Main Article 1 インタビュー by Koushiro Tamada 2018-09-26

夢とも現実ともつかない神秘的な生き物や草花を描く双子のアートユニット、HAMADARAKA(ハマダラカ)。東京を拠点に国内外で広く活躍するHAMADARAKAの初の大型個展『EDENDORDORADO(エデンドルドラド) ―楽園の物音―』がDIESEL ART GALLERYにて開催されている。「楽園」の生き物たちは幻想的でありながらも、恐ろしさは一切なく、いつか/どこかで出会ったことがあるような懐かしささえ感じさせる。彼女たちが描く「楽園」の正体を探るべく、HAMADARAKAの有園絵瑠(える)と絵夢(えむ)の2人に話を聞いた。

生まれながらの双子アートユニット

父が画材販売の仕事をしており、幼い頃から画材に囲まれていたという絵瑠と絵夢。彼女たちの遊び場はもっぱら自宅の庭や休日に出かけた山の中で、自然の草木や生き物たちに触れながら、物心ついたときには既に2人で一緒に絵を描いていた。「子どもの頃には絵本からも影響を受けました。レオ・レオーニの絵本が2人とも大好きでした」と絵瑠。絵瑠が小学校3年生のときに描いたという絵を見せてもらったが、パンサーやダチョウ、ゴリラなどの動物たちが集うサファリの風景画で、既に「楽園」の気配を予感させている。また、幼少期は共にクレヨンを好んでよく使っていたというが、その理由もHAMADARAKAの2人らしい。

「クレヨンを絵の具と混ぜたときに“弾く”効果に興味がありました。昔はそれが楽しくてアブストラクトなライブペインティングをしていました。だけど自分の中には美しいイメージがあるのに、そのやり方では上手く表現できなくて、急に嫌になってしまいました」(絵瑠)。

その後、2人は特殊メイクアップアーティストのレイコ・クルックを知り、2人とも特殊メイクの専門学校に進学する。現実を歪めてしまう特殊メイクの表現は、たしかにHAMADARAKAの世界観にも通じるものがある、というと言い過ぎだろうか。

幼い頃からいつも一緒に絵を描き続けてきた絵瑠と絵夢。だからこそ、ともにアートユニットとして活動するのは「あまりにも自然な流れだった」と絵瑠。HAMADARAKAというユニット名前の由来は、羽斑蚊(ハマダラカ)という蚊。マラリアを感染させるという恐ろしい蚊だが、マラリアではなく美しい何かを人々に感染させたいという想いから、2人はHAMADARAKAと名乗ることになった。

「楽園」の光景を追い続けてきた

HAMADARAKAの2人が追い求めてきたものは、幼少期から何も変わっていないのかもしれない。自分たちの中に潜む名状できない非現実の世界——それが彼女たちの中に潜む「楽園」だ。HAMADARAKAは「楽園」を追い続け、作品へと昇華させてきた。

「描きたいものはいつも変わらず私たちの中に存在しています。それが楽園です。楽園の中にもチャプターがあって、この章は光、次の章は闇、といったように年ごとに変わっていきます。チャプターは事前に決まっているわけではなく、毎年“今年は何が来ている?”と2人で話し合いながら探しています」(絵夢)

「楽園はどんな場所なのか、考えていくのが私たちのテーマです。そこには光があって、不思議な生き物たちが飛び交っている。稲妻が走ることもある。だけど恐怖はまったくない。私たちにとっての楽園は、そういったイメージです」(絵夢)

今回の展示のタイトル『EDENDORDORADO』は、「EDEN(楽園)」と「EL DORADO(黄金の国)」をかけあわせた造語だ。「楽園」を意味する「EDEN」だけでは自分たちの抱いているイメージに対して「物足りない」と感じていたところ、「EL DORADO」という言葉を組み合わせたときの黄金の「重み」が、2人のイメージに上手く合致したという。

434Hzに共鳴した生き物たちの饗宴

上述の楽園の「チャプター」に関して言えば、今回の展示は「音」が重要なキーワードになっている。434Hz(ヘルツ)という周波数に共鳴して目覚めた不思議な生き物たちの饗宴、それが今回の『EDENDORDORADO』が描いている世界だ。楽器に触れたことのある人は知っているが、440Hzという周波数は一般的なチューニング(調律)で用いられる基本音だ。しかし、440Hzは人々を興奮させ、攻撃性を呼び起こすとも言われているらしい。一方、432Hzは心臓の鼓動に調和し、癒しの効果があるという。

「私たちはよく寝る前にイメージの残像が見えることがあります。434Hzの音を実際に聞いてみると、絵を描き疲れて寝る直前のふわりとした感覚、そのときの振動によく似ていました。」(絵瑠)

HAMADARAKAが共鳴した434Hzという周波数は、440Hzと432Hzの狭間にある音だ。つまり興奮と癒しの狭間にある音。その音に共鳴して、現実と夢の狭間に潜む生き物たちが静かに目を開き、動き始める。それが『EDENDORDORADO』の世界。その話を聞いて、展示されている作品たちを眺めてみる。現実とも夢ともつかない生き物が闇の中から現れ、キャンバスの上を漂っているように見えてくる。

壁画以外では過去最大の大きさとなる4枚のキャンバスをつなぎ合わせた大型の絵画は、生き物たちや草花が絡み合っている光景を描いている。「これだけの大きさのキャンバスに描くのは初めてで、描き方や表現の仕方に広がりを感じました。この先にも良い影響があるという手応えがありました」と絵瑠。生き物たちに混じって浮かんでいるグレーの球体は何なのかと2人に問うと、「光の残像のようなもの。球としか言いようがない」と絵夢。「浮遊感を求めていて、球体を入れてみると気持ちが良かったんです」。

球体や光の残像のような抽象物は立体作品としても制作され、ギャラリーの中に浮遊している。434Hzの響きに召喚された球体はまるで別の世界からやってきた月のようで、どことなく村上春樹の『1Q84』を思い起こさせた。

「楽園」はどこにあるのか

HAMADARAKAが描いた「楽園」の中に人間の姿は見えない。そして南米に自生しているアナナスなどの植物の姿が目立つ。「楽園」の原風景はどこにあるのだろうか。

「人間がまったくいないわけではなくて、実は絵の中に顔のない人間のフォルムも混じっています。といっても、自分たちが考えている楽園に人間の形は関係ないというか、人間の存在は重要視していません。それよりも鳥肌が立つような生き物を描くのが自分たちの性に合っています」(絵瑠)

「トロピカルな感じが好きなんです。以前、ブラジルのアルト・パライソ(高い天国)というUFOで有名な街に行ったのですが、その近くにはたくさんの滝があって、植物が生えていて。そのときの光景が印象に残っています」(絵夢)

もちろん2人がブラジルで見た光景がそのまま「楽園」につながっているわけではない。「楽園」はHAMADARAKAの内なる領域にあり、幼少期から現在に至るまで、2人は目をそらすことなく「楽園」に向き合い、作品として表現し続けてきた。月並みな仮説だが、もしかすると「楽園」は誰もが心の奥に抱えている世界なのかもしれない。だからこそHAMADARAKAの作品は見る人に親しみさえ感じさせ、日本のみならず世界各国で評価されているのではないか。HAMADARAKAの作品には、言語や文化を超えたプリミティブな強度がある。

四方をHAMADARAKAの作品に囲まれたDIESEL ART GALLERYの中にいると、自分もまるで「楽園」の中に迷い込んだような感覚がしてきた。

■展覧会概要
タイトル:「EDENDORDORADO (エデンドルドラド)―楽園の物音―」
アーティスト:HAMADARAKA(ハマダラカ)
会期:2018年8月31日(金) 〜 11月15日(木)
会場:DIESEL ART GALLERY(DIESEL SHIBUYA内)
住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
電話番号:03-6427-5955
開館時間:11:30 〜 21:00
休館日:不定休
ウェブサイト:http://www.diesel.co.jp/art

■関連イベント
HAMADARAKAと縁が深いアーティストの伊藤桂司と河村康輔をゲストに迎え、トークイベントを開催いたします。
日時:10月27日(土)18:00 〜 19:00
場所:DIESEL ART GALLERY
ゲスト:伊藤桂司、河村康輔
入場料:無料

(取材・文:玉田光史郎 Koushiro Tamada)

Koushiro Tamada

Koushiro Tamada. 玉田光史郎。熊本県生まれ。ファッション/カルチャー系の出版社に勤務後、広告の制作ディレクターを経て、2014年よりフリーランスのライター/ディレクターとして活動。趣味は園芸とクライミング。 ≫ 他の記事

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