『鉄工島FES 2018』インタビュー【前編】:『鉄工島FES 2018』に懸ける想い

『鉄工島FES』は、モノづくりの魂が集結した文化の創造地点である!

In インタビュー by TABインターン 2018-10-11

「鉄工島FES 2017 Live PBC」

大田区のモノづくりの最前線、京浜島で、11月4日(日)に開催される音楽とアートの祭典、『鉄工島FES 2018』。現役の鉄工所と、2016年に京浜島に誕生したアートファクトリー「BUCKLE KÔBÔ」、その周辺を舞台に、モノを創り出す魂がカタチとなって表れる、熱いエネルギーに満ちた1日となる。10月15日(月)までは、クラウドファンディングも行っている。

音楽×アートのコラボレーションだけでなく、世界水準の技術者たちが集結した「京浜島」という環境そのものを表現の中に取り入れ、新たな文化を創造していく『鉄工島FES』は、特定の文化シーンに留まることなく、これからの日本を多様な側面から盛り上げていく起爆剤となり得るだろう。

今回は、鉄工島FES実行委員会の代表であり、中心会場となる株式会社須田鉄工所 代表取締役の須田眞輝さん、『鉄工島FES』事務局長である、寺田倉庫の伊藤悠さん、参加アーティストSIDE COREの松下徹さんにお話を伺った。

「東京にはアーティストたちが住み、制作する街が無い」

ニューヨークのブルックリンや、北京の798 地区のように、世界中の都市に「アーティストが住んで制作している街」がある。モノをつくる⼈々が集い、⽂化的に都市を開発していく動きは珍しくない。しかし、東京には「モノを売る場所」や「⾒せる場所」はあっても、「つくる場所」が集積した街がない。

「ギャラリーや美術館ばかりが街に増えていく。そういう場所も⾯⽩いんだけど、俺たちからすれば、アーティストたちが制作をしている場所が実は⼀番⾯⽩いんだよね。モノをつくっている場所には、その場所にしかない磁場のようなものが発⽣している。⾳楽でもファッションでも⼀緒なんだけど、『モノをつくる場所』という意識をもっと持つべきだと思うんだよ。」と、参加アーティストSIDE COREの松下さんは語った。

そこで2016年に、京浜島にアートファクトリー「BUCKLE KÔBÔ」が誕生したのだ。クラウドファンディングで資金を集め、松下さんを含む20数名のアーティストの協力のもとに、たくさんの人の愛と覚悟によってつくられた場だ。都内では制作が困難な、巨大な作品、火や大きな音を出すような作品作りをのびのびと行える環境として、工場の街・京浜島は最適だった。
京浜島は、モノづくりの街であると同時に、近年では時代に淘汰されてゆく現場でもある、と、須田鉄工所の須田さんは言う。京浜島がモノづくりの中心となってから40年近く経つ間に、もともとあった会社は半分以下に減った。製造業は次々に海外へ移転し、時代の需要とのズレを受け止めなければいけない現実もある。大きな課題が渦巻く中で、工場や倉庫の跡地をアーティストの制作現場に生まれ変わらせる発想は、縮小に向かっていた京浜島を文化の創造地点へと引き戻し、全く新しい時代の先端へと導いたように思う。この、「BUCKLE KÔBÔ」の誕生が『鉄工島FES』の第一歩となっているのだ。

BUCKLE KÔBÔ

では、こうした経緯を受けて開催に至った『鉄工島FES』に、どのような想いを抱いているのか。『鉄工島FES』に懸ける想いについて、異なる立場の三者にそれぞれ胸の内を語っていただいた。

「創造するエネルギーを発火させる場所」by 伊藤さん

伊藤)去年は、この須田鉄工所とBUCKLE KÔBÔを中心に、この一帯を会場にしていました。今年は、開催の会場を5箇所くらいにし、工場とアーティストとの連携を増やしていこうと考えています。
いずれは島のいたるところで、同時多発的に、路上で音が鳴っているような風景になったらいいな、と。そのためには、なるべくこの島の人たちと協働していきたいですね。
 
—去年から、また少し規模を拡大しての開催となるんですね!

伊藤)須田さんは、去年の2倍にならなくてもいいから、せめて1.3倍でもいいから、やることが大事だって言ってくださっていて。いきなり100までいけないですけど、1が3になったり4になったり、その積み重ねや、プロセスもすごく大事なことなんじゃないかな、と思っています。
 
—その数字っていうのは、コミュニティーというか関係性みたいなものが、ということですか?

伊藤)そうだね、人と人との関係性かもしれないね。『鉄工島FES』がなかったら、こんなに須田さんに会いに来たり、京浜島に足を運ぶことも無かったかもしれない。まつりは一緒に何かをやるから面白いみたいなところがあると思うんです。人との接点を作るために、イベントを起こすっていうのは大事なことなんですよね。

『鉄工島FES』のすべては、普段の生活が築き上げてきた関係性の上に成り立っていることを強く感じさせられた。生活の中にコミュニケーションが生まれ、モノづくりをする者同士の連帯意識から、自然と、制作を見守り、応援していくような雰囲気になっていったそうだ。
こういった取り組みを通じて、海外から東京を訪れた人が、羽田空港を降りて都心に向かう途中の湾岸エリアを、単なる通過点ではなく、文化的なものを見るために立ち止まってもらえるような文化観光資源にしていく構想も見据えているようだ。
京浜島は、時代の流れのなかで、製造業の縮小や工場の減少など、厳しい現実に直面していることも事実である。そういった現実に対しても、「それは決してマイナスなことではないと思っているんです。そこからでもまたクリエイティブに発信していくことがアーティストであればできるのではないかと感じています。『鉄工島FES』が、創造するエネルギーを発火させる場所になれば。」と語った。

「今できるなら、今やらないと。」by 須田さん

鉄工島FES実行委員会代表・須田眞輝さん

須田)我々の将来は、明日。よく企業には長期計画で5年、10年先どうなるっていう、具体的なものあるじゃないですか、そういうのは、町工場の人にはほとんど無いと思う。なかには、将来長い先見てる会社はもちろんあるけど、大田区の小さい企業はそんな先見ていない。
3年後なんてこんなことできるかわからないし、会社だってあるかどうかわからない。やっぱり今できるなら今やらないと、もう5年後なんてできない。
 
—そういう考え方に基づいて、アーティストの方達との関係性も生まれたのですか?

須田)寺田倉庫さんがこういうところに入ったのでね、やっぱり違う考えの人と話すのは楽しいじゃないですか。同じ人と話してもそんなに物事深まるわけじゃないから。とくにアート系の人っていうのはまたオリジナリティもあるしね。こんなことは、40年ここにいて、初めての経験だった。
 
『鉄工島FES』の代表がフェスに懸ける思いは意外にも冷静だった。見えない未来を想定して何かを期待するのではなく、「今」における瞬発力を大切にしているようだ。
また、偶然の出会いや自然の流れに抗わない柔軟性も見受けられた。それは、京浜島の現状や製造業の将来をクールに捉えているからこそ、いつでも豊かな心で「今」起きていること、出会っていることに向き合って受け入れていこうとする姿勢からくるものだろう。こういった須田さんの姿勢が、『鉄工島FES』を開催に向かわせたのだと思う。

「日常のなかに、一つのアウトプットを作る」by 松下さん

SIDE CORE (左:松下徹さん)

—アーティストという立場からは、『鉄工島FES』をどう捉えているのですか?

松下)俺たちからしたら一番重要なのは日常で、普段制作しているなかで、須田さんにお世話になったり、お茶したり、この辺の地域の人たちといろんなコミュニケーションができてくる。
やっぱさ、イベントも重要なんだけど、それ以前に日々いろんなことが起きているわけで。それを一個集大成にするっていう意味で、今回のイベントがある。まあ、お祭りみたいな感じで一回、催事化するっていうことだよね。それがあることによって、明日からまた、制作しようかってなる。だから、基本は普段がすごい大切なんだ。
『鉄工島FES』っていうのは、フェスをやるためにこの街を借りたいとか、みんなで盛り上がろう!っていうよりも、普段自分たちや職人さんたちがこの場所で少しずつ交わりあいながら生活をしているから、そういう日常のなかに、一つのアウトプットを作るっていうか。そのためのお祭りみたいな感じ。
やっぱり、そういう日常の積み重ねがないと(鉄工島FESは)できないから。大きいビジョンもあるけど、それ以前に、生活の延長線上になくちゃいけないなって思っているんだよね。

『鉄工島FES』は、単なる集客イベントではないのだ、ということを改めて実感させられた。松下さんは、お話のなかで、何度も『鉄工島FES』について、「お祭り」や「催事」と表現していた。
一般的な「まつり」は、年中行事や通過儀礼と関連して行われることが多く、私たちの日常生活と深い結びつきを持っている。民俗学的に言えば、「まつり」は「ハレ(非日常)」の日となるだろう。
『鉄工島FES』は、京浜島で日常生活を送るアーティストにとっての「ハレ」の日なのだ、と感じた。

記事の後編はこちらから:『鉄工島FES 2018』インタビュー【後編】:タイトルに込められた想い

[TABインターン] Miharu Sato: 早稲田大学文化構想学部3年の、「面白い人とたくさん出会う」をモットーに生きる現役大学生。色んな人との不思議な縁を手繰っていたら、TABインターンに行き着いた。アートも映画もテレビも音楽も、どれも少しずつちゃんと好き。

TABインターン

TABインターン. 学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。 ≫ 他の記事

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