公開日:2020年7月10日

ゴッホの《ひまわり》が目印:西新宿に「SOMPO美術館」が開館

7月10日、西新宿に「SOMPO美術館」がオープン。開館記念展には美術館を代表するコレクションが揃う

1976年7月、安田火災海上(現・損保ジャパン)本社ビル42階に開館した「東郷青児美術館」を前身に2020年7月10日、「SOMPO美術館」が新たにオープンする。

新宿西口高層ビル街の玄関口に位置する地上6階建てのこの美術館は、外観の垂直面と曲面、1〜2階を見通せる開放的なエントランスが特徴だ。美術館の目印となるのは、正面前庭に設置された、同館を代表するコレクションのひとつでもあるフィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》(1988)の複製陶板。外周には東郷青児の《超現実派の散歩》をモチーフとしたロゴのフラッグも配置されている。

正面前庭に設置された《ひまわり》の陶板

6階建ての美術館のうち、展示室は3階〜5階。この3階全室を使い、現在、開館記念展「珠玉のコレクション-いのちの輝き・つくる喜び」(7月10日〜9月4日)が行われている。

同館のコレクション約630点の中でもとくに際立つ優品を集め、フランス近代絵画の中でも人気の高いポール・ゴーギャンやポール・セザンヌ、モーリス・ユトリロをはじめ、東山魁夷や平山郁夫など幅広く紹介する本展。

明治〜大正期の画家が描く自然表現が集まる第1章、同館と読売新聞社による全国公募展「FACE」のグランプリ作品からなる第2章、東郷青児の作品にフォーカスした第3章など、第6章を通して美術館の歩みと輪郭を知るような構成となっている。

展示風景より、壁に並ぶ「FACE」の歴代グランプリ作品。手前の彫刻は東郷青児の《砂の影》(1977)
展示風景より、手前が東郷青児《超現実派の散歩》(1929)。SOMPO美術館のロゴマークのモチーフとして使用されている

第4章「風景と人の営み」では、グランマ・モーゼス(アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス)の作品7点を展示。70歳代になり絵を描き始め、身近な牧場や農民、田園生活風景などを描いたグランマ・モーゼスの作品を、同館は33点所蔵。これは日本で最多のコレクションとなり、同館のコレクションを形づくる特徴のひとつでもある。

修復を終えた山口華楊とルノワールの作品も見どころだ。ピエール=オーギュスト・ルノワールの《浴女》(1892-93頃)は、過去に修復された際には画面全体にニスが塗布され、経年によりそのニスに黄ばみが生じ、画面全体の色彩が沈んで見えていたという。本展ではニスを除去し、オリジナルに近い鑑賞に適した状態へと修復された本作を見ることができる。

展示風景より、左からピエール=オーギュスト・ルノワール《帽子の娘》(1910)、《浴女》(1892-93頃)

展示のクライマックスを飾るのは、ポスト印象派を代表するゴッホによる言わずと知れた代表作《ひまわり》(1988)だ。1988年2月、明るい光と澄んだ空気を求めてパリから南フランスのアルルへと移り住んだゴッホ。画家仲間たちとの共同生活を夢見たゴッホは、「ひまわり」の連作(全7点)に着手した。

本展で展示される同館所蔵の《ひまわり》は、現在はロンドンのナショナル・ギャラリーにある連作のひとつ「黄色い背景のひまわり」をもとに描かれたものだとされている。

展示風景より、フィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》(1988)

なお、同美術館では10月6日より「ゴッホと静物画-伝統から革新へ」展を予定している。ヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人達から何を学び、いかに作品に反映し、さらに次世代の画家たちにどのような影響を与えたかを探る本展にも注目したい。

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