公開日:2021年10月1日

「庵野秀明展」、圧巻の総展示数1500点超え! 国立新美術館で開催される世界初の大規模展をレポート

アマチュア時代から『シン・エヴァ』『シン・仮面ライダー』まで、庵野秀明の世界を体感できる世界初の大規模展をレポート

「エヴァンゲリオン」シリーズをはじめとする数々の傑作を生み出し、現代日本を代表する映画監督である庵野秀明。そのアマチュア時代から現代までの軌跡をたどり、未来への展望をも網羅的に見せる世界初の展覧会「庵野秀明展」が、東京・六本木の国立新美術館にて2021年10月1日~12月19日に開催される。

会場風景より、『新世紀エヴァンゲリオン』の展示

総展示数は1500点以上。章立ては、「原点、或いは呪縛」「夢中、或いは我慢」「挑戦、或いは逃避」「憧憬、そして再生」「感謝、そして報恩」の全5章からなる。庵野が生まれた1960年代当時のものから、生家から持ち出された重要品、遠くロンドンから運ばれたものまで、多様な作品・資料が展示される。本展が掲げるみどころは、「庵野秀明をつくったもの 庵野秀明がつくったもの そして、これからつくるもの」。まさに庵野ワールドを圧巻の物量・情報量で体感できる本展を、順を追って紹介したい。

庵野秀明をつくったものたち

会場風景より、安野モヨコ《庵野秀明 像》(2021)
会場風景より

展示室に入ると、まずは安野モヨコによる庵野秀明のポートレイト、そして監督のパネルが観客をお出迎え。

「第1章 原点、或いは呪縛」の展示室に足を踏み入れると、庵野が幼少期から敬愛する『ウルトラマン』や『仮面ライダー』『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』などのマンガ、アニメ、特撮作品にまつわる立体造形物や原画といった貴重な資料の数々が目に飛び込んでくる。
さらに庵野に多大な影響を与えた数々の映像作品が一挙に映し出される縦3m×横15mの巨大LEDスクリーンも設置され、まさに「庵野秀明をつくったもの」を全身に浴びるように体感することから、本展は幕を開ける。

会場風景より

アマチュア時代、そしてプロの世界へ

アマチュア時代から『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)制作時までの軌跡を、現存する関連資料で紹介するのが「第2章 夢中、或いは我慢」だ。
庵野が中学生時代に描いたという油彩画は、なかなか見る機会がない貴重な展示だ。

会場風景より、自主制作作品『ウルトラマン』(1980)の展示

高校2年生のときに8ミリフィルム機材を購入して以降、アニメや特撮の自主制作フィルムづくりに没頭した学生時代の作品や資料の数々も出品。第20回日本SF大会(通称:DAICON III)のオープニングアニメーション(1981)や、実写特撮映画『DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン』(1983)など、アマチュア離れしたクオリティでいまなお語り継がれる作品の資料も見ることができる。

メカニック描写や爆発や煙といったエフェクト作画に優れた庵野は、次第にプロのアニメーターとして頭角を現す。
スタジオジブリ『風の谷のナウシカ』(1984)で、新人だった庵野が巨神兵のシーンを担当したことは有名だ。このとき師弟関係が芽生えた宮崎駿によるらくがきやメモも出品。

アニメーターとして参加した『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987)、初監督を務めた『トップをねらえ!』(1988)、続く『ふしぎの海のナディア』(1990)など、キャリア初期の重要な作品にまつわる資料が並ぶ。

『新世紀エヴァンゲリオン』

1995年、テレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』が誕生。アニメファンのみならず、アーティストや学者までを巻き込んで社会現象を起こした本作の展示では、シンジ、レイ、アスカといったキャラクターや人造人間エヴァンゲリオンの設定資料などが展示されている。

会場風景より、『新世紀エヴァンゲリオン』の展示
会場風景より、『新世紀エヴァンゲリオン』の展示

実写と特撮作品、そして『シン・ゴジラ』へ

「第3章 挑戦、或いは逃避」では、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997)の後に庵野が新たに挑んだ、実写や特撮作品を紹介。

会場風景より、『ラブ&ポップ』の展示

村上龍原作の『ラブ&ポップ』(1998)や『キューティーハニー』(2004)、そして監督/総監督を務め82億円を超える興行収集を記録した大ヒット作『シン・ゴジラ』(2016)は記憶に新しい。

会場風景より、「特撮博物館」や『シン・ゴジラ』の展示
会場風景より、『シン・ゴジラ』の展示

『シン・エヴァ』第3村のミニチュアセット

2006年に株式会社カラーを設立し、代表取締役に就任した庵野は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズに着手。今年、総監督を務めた最新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(以下、『シン・エヴァ』)によって長い歳月が費やされた本シリーズがついに完結した。多くのファンが待ち侘びた本作は、コロナ禍にもかかわらず興行収入100億円を突破している。

会場風景より、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ミニチュアセット
会場風景より、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ミニチュアセット

『シン・エヴァ』の前半で非常に印象的なシーンとして登場した「第3村」。打ちひしがれたシンジが身を寄せ、アヤナミレイが田植えをしたこの村の描写に、臨場感と現実感を吹き込むためにつくられた9×4mに及ぶ巨大なミニチュアセットが、会場に広がる。
そのほか、本作の設定資料やイメージラフ、大きな青空の背景パネルも見逃せない。

会場風景より、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの展示
会場風景より、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの展示
会場風景より、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの展示
会場風景より、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの展示
会場風景より、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の背景パネル(青空)

未来への継承

庵野のこれからの仕事について紹介する「第4章 憧憬、そして再生」。制作に携わる『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』から、現在公開可能な資料を展示する。

会場風景より、『シン・ウルトラマン』の展示
会場風景より、『シン・仮面ライダー』の展示

「第5章 感謝、そして報恩」は、未来へ向けた継承のためのプロジェクトを紹介。
「僕らがいなくなってもアニメや特撮が残るようにしたい」という思いで庵野秀明が立ち上げ、資料保存に取り組むATAC(特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構)や、2014年にドワンゴとカラーが共同企画した短編映像シリーズ企画「日本アニメ(ーター)見本市」、アニメーションの背景美術スタジオ「でほぎゃらりー」など。
「報恩」という言葉からはアニメや特撮作品に対する庵野の並々ならぬ情熱と感謝が感じられ、それらを次世代に受け継ぐという強い意欲に圧倒される。

会場風景より、「第5章 感謝、そして報恩」の展示
会場風景より、「第5章 感謝、そして報恩」の展示

展示の最後には、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』の大型立像が。一緒に記念撮影すれば、貴重な思い出として残るだろう。

会場風景より

『シン・エヴァ』によって、その作品世界が改めて多くの人々を魅了した今年。本展は庵野秀明のこれまでの仕事を総覧する絶好の機会だ。貴重な展示品を間近に見ることで、同時代に生きる巨大な才能の創造の源にぜひ触れてほしい。

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