サイモン・フジワラの個展「Who the Bær」がプラダ青山店で開催される。会期は2022年10月15日から23年1月30日まで。
タイトルにある「Who」とは、フジワラがコロナ禍のロックダウンの時期に創造した漫画のキャラクター。メインビジュアルに描かれた姿は耳のある姿は熊やネズミのようでもあるが、まだしっかりとした人格や性格ができておらず、特定のアイデンティティもジェンダーもセクシュアリティも、そして明確なデザインさえもない。自分がイメージの存在であることだけは理解しているWhoは、「Whoの世界(Whoニバース)」を巡りながら、自分が何者なのかを探っていくが、展覧会ではその過程をユーモラスに構成する。
「Who is Who?(Whoって誰?)」と書かれた本の表紙になった巨大なコラージュから始まり、ストップモーションアニメーション《Hello Who?》では、Whoが多様な文化的・地理的背景を旅しながら向き合う哲学的なアイデンティティや自分らしさについての質問を投げかける。さらに展示を進むとWho the Bærのイメージを集めた「Whoジアム」という名の博物館・美術館が登場し、Whoのイメージが組み込まれたアフリカやアジア、古代エジプトの遺物を模したコラージュやインスタレーション、彫刻を展示。文化の盗用や遺産の返還、植民地時代の略奪の問題を考察する。
サイモン・フジワラは、日本人の父親とイギリス人の母親を両親にもつ自身の生い立ちをふまえ、異なる文化・社会のあいだで揺れ動く自身のアイデンティティを問うてきたアーティストだが、今回の展示でもアイデンティティの探索が主題になるようだ。「Who the Bær」について、フジワラは「ハイパー資本主義的な娯楽文化のどんどん意味をなさなくなっている世界に対する子供らしいダダイスム的なリアクション」として説明している。
気候危機、文化盗用、美容整形、ポップアートといった多様な文化・事象をWhoの成長の物語を介して取り上げる同展を通じ、「映え」や自己表現、「本当の自分らしさ」の探求にとり憑かれた現代社会について考えたい。