名古屋で初開催となる現代アートのイベント「ストリーミング・ヘリテージ|台地と海のあいだ」が3月28日まで開催中だ。堀川沿いの熱田・宮の渡し、納屋橋、名古屋城などに、名古屋にゆかりのある8組の作品が展示されるこのイベントには、現在、東京のOta Fine Artsで個展を開催中のさわひらきらが参加。3月28日までの金・土・日の11:00-20:00には、日没後にしか見ることのできない屋外での映像プロジェクションも行われ、これらのスポットでは、日中、音楽やサウンドアートが楽しめるほか、パフォーマンスやトークプログラムもある(要予約)。
おすすめの回り方は、地下鉄伝馬町駅4番出口を出て、熱田・宮の渡しエリアにある丹羽家住宅(旧伊勢久)の展示会場まで歩き、宮の渡し跡(船着場)から屋形船に乗って納屋橋まで行くルート。また、堀川沿いを歩いたり、納屋橋から名古屋城エリアの朝日橋まで屋形船で移動することもできる。インフォメーションの役割を果たす移動型ミュージアム/ラボラトリーの「MOBIUM(モビウム)」は、伏見駅近くの納屋橋ゆめ広場に。イベント参加費は無料となっている(乗船料[200~300円]と名古屋城の入場料[500円]を除く)。
平川祐樹は、メディアとして、また素材としての映画を考察する映像作家。丹羽家住宅(旧伊勢久)と宮の渡し公園にて、映画史家であるウィルフレッド・デイによる映画撮影の起源についての講義を参考としたインスタレーション「Twenty Five Thousand Years to Trap a Shadow」を発表している。
熱田が東海道の宿場町であった1800年代初頭、大名側近のための宿であった丹羽家住宅(旧伊勢久)は、展覧会場に加えカフェ・バーとしても使用されている。
丹羽家住宅の内部では、1900年代初頭に国内外で珍重された瀬戸焼の輸出地としての地域の歴史を阿野太一が写真で紹介。かつて水運のターミナル駅があった堀川で運ばれた瀬戸物の美しい青と白の模様がとらえられている。
同じく丹羽家住宅では、平川祐樹によるビデオ・インスタレーションが展示中。3つのスクリーンでは、失われてしまった戦前の日本映画の映像が再現されているが、これは平川がアーカイブの写真をもとにセットをつくり、映画を再撮影したものだという。
名古屋から東へ30分、瀬戸焼の発祥の地である瀬戸市を拠点に活動するアーティストユニットのBarrack(近藤佳那子・古畑大気)。Barrackは、ゲストアーティストの阿野太一と共同で写真展を開催するほか、アートイベント、軽食を提供するカフェ&バーを運営している。
地元の名所や歴史に触れるならば屋形船へ。豪華な内装の船内には低めのテーブルが置かれ、側面には窓があるため、歴史的な橋や松重閘門などの景色を眺めることができる。乗船前にはスケジュールのチェックを。
船はいくつかの橋の下を通るが、その中にはアート作品が投影されている橋が。これらの作品は船上からも見ることができるが、地上から見るほうがおすすめだ。
デジタルメディアアーティストの井藤雄一は、グリッチやノイズを利用した映像と音のインスタレーションを展開してきた。今回は天王崎橋の下で、映像とアンビエントミュージックからなる作品をプロジェクションしているためお見逃しなく。
砂絵アニメーションやペイントオングラス(ガラス板の上に絵の具で描いた絵をコマ撮りしたアニメーション)で感情を揺さぶるような自由なアニメーションを手がけてきた佐藤美代。納屋橋から見えるビルの側面に、アメリカのミュージシャンBONZIEと共作での作品を上映中だ。
さわひらきは、心象風景と記憶、想像のシーンを組み合わせた夢のようなビデオ・インスタレーションを制作。錦橋の下には「Flying Along a Dry River Bed (Installation)」が投影されている。
隣接する「みのりの広場」でも、ビルの壁面を利用してさわの作品が上映中だ。その前には、さわ自作の蓄音機用のスピーカーを複数台並べたサウンドシステムが設置されている。