藤村豪の初めての個展"being in right places"は、写真をメインとして、音声やテクスト、映像によって構成されるインスタレーションです。作品の核をなす写真は、一見するとアウトフォーカスで撮影されたものにも見えますが、目を凝らしてみると、グリッド上の細い糸状の部分に焦点が合っていることがわかります。これは、彼の家族や知人が生活する部屋の窓から外を撮影したもので、グリッド状のものは、日本家屋の場合、ほとんどの窓に設えられて、その視線を遮ることになる防虫用の網戸なのです。一方、映像やテクスト、音声は、いずれもその部屋に住む人のものに取材したもので、漠としたイメージも、そこに生活するものにとっては、確かな意味を持っているということを示唆します。