終了した展覧会・イベントです

中野北溟 「津軽 / TSUGARU」

東京画廊+BTAP
終了しました

アーティスト

中野北溟
イベント/ 詩の朗読
赤平泰処(AKAHIRA TAISHO)
2009年1月6日(火)|19:00-

東京画廊は、長い展覧会歴の中で書に関する企画展を2回開催しています。1977年の『摩崖碑拓本展』、そして2000年の『比田井南谷展』です。現代美術を専門とする画廊が、なぜ書の展覧会を企画するのかと質問されます。その際、東京画廊は書を絵画として観ているからだと答えていました。

第一回の摩崖碑拓本展では、開通褒斜道刻石、泰山金剛経などの大きな拓本を画廊の壁一面に展示しました。拓本は墨のフロタージュとして見ることができるでしょう。岩に刻まれた文字(漢字)は、岩肌ごと紙の画面に浮き出て、彫刻のレリーフのように観る人に迫ってきます。この展覧会では、文字が刻した無名の人々の身体性が紙を通してギャラリーの空間を満たし、千数百年前の時間が蘇りました。文字は、意味を伝えるというその役割を越えて、アクションペインティングとして、絵画的抽象性を高めていました。もっとも、漢字は象形文字から発生しているのですから、これは当然なことかもしれません。

比田井南谷の作品は、東京画廊で展示する遥か以前の1950年~1960年代に欧米を巡回し、抽象表現主義のアーティストたちに多大な影響を残しています。比田井は、伝統的な書道を続けるうちに、文字を離れ、独自の造形に取り組みました。書道は、先端を切りそろえていない東洋独特の筆を使い、長年の鍛錬を必要とします。南谷が自ら「心線作品」と呼ぶ新しい造形は、書の伝統の上に立ちながら、絵画と同じレベルに到達し、これが同世代の抽象表現主義の作家の興味を惹いたのです。東京画廊はこれを、漢字の造形を基盤とした現代の水墨画と考え、展覧会を企画しましたが、若い作家や美術館から大きな評価を受けました。

私は、水墨画を東洋画の象徴ととらえ、大きな関心をもっていたのですが、この2つの展覧会以降、その関心は自然と薄らぎ、和漢の古典の書や現代の書も観るようになりました。初めは絵画を観るように書を観ていたのですが、いつしか書の文字性にも魅かれていることに気付きました。そのような折、友人の書家である外林道子氏に誘われて訪れた書展で、中野北溟氏の作品に出会いました。中野氏の作品は、比田井と異なり、「ことば」によって構成されています。通常は語られたり、書かれたりする「ことば」が、中野氏の作品の中では、不思議な存在感を持っています。それは、現代のことばを書きながらその文字の行間からこの国の風土のリズムが聞こえてくる存在感です。

現代の筆記用具はボールペンが主となり、文字はパソコンのキーボードを使って打ち込まれる時代です。しかし筆と墨で書かれた文字は、書いた人の息づかいを乗せ、人間性までも伝えます。確かに、書というメディアは、現代社会においてすでにその日常性を失っています。しかしアートの表現として考えると、その可能性はむしろここに始まるのではないか、と私は思うのです。つねに私たちは日常性の外部に非日常性を必要とし、そこにアートの社会的機能があります。だとすれば書が非日常となった現代こそ、その役割を真剣に考えるときではないでしょうか。非日常性としての書、アートとしての書を中野北溟氏の書展を観ていただくことを願っています。

スケジュール

2009年1月6日(火)〜2009年1月31日(土)

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

オープニングパーティー 2009年1月6日(火) 18:00 から 20:00 まで

入場料無料
会場東京画廊+BTAP
http://www.tokyo-gallery.com/
住所〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-5 7F
アクセスJR新橋駅銀座口より徒歩4分、東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A3出口より徒歩5分、都営地下鉄大江戸線・ゆりかもめ汐留駅5番出口より徒歩5分
電話番号03-3571-1808
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