井上萬二「白磁展 ―空海花―」

セイコーハウス銀座ホール

終了しました

アーティスト

井上萬二

昨年の傘寿記念展を経て、ますます創意が冴えわたる白磁の重要無形文化財保持者（人間国宝）、井上萬二氏。第34回目となる今回の個展では、氏の本領である白磁に加えて、若き日に挑戦した〈練り込み〉や彩釉を用いた作品群が話題を集めそうだ。

「白磁流雲練込花器」は、氏が日本伝統工芸展で初入選を果たした作品を42年ぶりに復活させた意欲作。呉須を混ぜて練り込まれた白い磁土を、至妙の轆轤（ろくろ）技により、たっぷりとした器形に仕上げた作品で、少年の頃、パイロットに憧れて見上げた大空と雲の印象が壮快に表現されている。ほかにも氏が長年愛着を寄せる牡丹や椿、青海波の文様に加え、若桜を鮮やかな朱と紫で表した「白磁染彩釉桜彫文皿」や、怒涛の海を構図にした「白磁緑釉波彫文皿」など、多彩な作品が並ぶ。空、海、花―それは戦争体験や修業生活を強靭な精神で乗り越えてきた氏の青春時代を象徴するモチーフでもある。

光の三原色は、赤と緑と青である。白く透明な光が、実は幾多の色光を含有しているように、井上氏も白磁を追求しながら、その内に色彩と表現の限りを包有していたことに改めて瞠目させられる。今回の展覧で出品される、新たな形に取り組んだ白磁の壺をはじめ、彩釉・緑釉・黄緑釉の皿・鉢・花瓶・香炉・盃など80余点は、氏の潤沢な創造力と気力を証明するものだろう。

会期中、会場にて井上萬二氏による作品解説を予定しております。

[画像:「白磁流雲練込花器」径34.5×高さ19.3cm]

スケジュール

2010年6月3日(木)〜2010年6月19日(土)