終了した展覧会・イベントです

宮永亮 「地の灯について」

児玉画廊|白金
終了しました

アーティスト

宮永亮
宮永は2009年に京都市立芸術大学大学院造形構想を修了し、修了制作展及び同年8月に開催された児玉画廊での初個展「Wondjina」において発表された同名の映像作品では、宮永の出身地である北海道の空や湖など自然の風景を撮影した実写の映像をソースとして、重ね合わせたり歪めたりと様々なデジタルエフェクトを併用しながら、世界の美しさの根源を捉えました。また同個展にて上映した雨粒が水面に作る波紋の映像を編集して文字やリズミカルな軌跡を描きだすビデオインスタレーション「RAINY LETTER」では、一瞬の、それも非常にミクロな現象を、時間的にもサイズ的にも引き延ばし巨視化して置き換えるという試みを見せました。大学院修了以降、児玉画廊での個展の他「アートアワード トーキョー丸の内2009」(行幸地下ギャラリー)、「ヤング・パースペクティブ2009」(イメージフォーラム)、「NEW DIRECTION 1 exp.」(トーキョーワンダーサイト本郷)への出展、また4月8日から韓国ソウルにて に開催される「move on asia 2010」では「Wondjina」 が出品上映されます。

宮永が「自身の振れ幅を見せる」としているように、今回発表される新作「地の灯について」は、前作「Wondjina」とは対極に位置する作品だと言えます。「Wondjina」では素材として使用された映像断片そのものも非常に精度の高い映像であり、また、それらを元に綿密なエディティングとマニピュレーションによって作り込むと同時に、音楽も構成もプレゼンテーションも、全てに「完成」を求めた映像作品とするなら、今回はあえてラフな撮影方法を取り、一個の映像作品としてではなく、素材として使用した映像も同時に空間内の壁面に投影し、機材や配線をそのままの状態で配置するなど、意図して過程を露呈させるようなインスタレーションとして発表します。

夜間、上部にビデオカメラを設置した自家用車で走行しながら、道路沿いに流れる街景を撮影して集めた映像を、走行中の振動によるブレも、エンジン音や雑多な騒音も、手つかずの状態で何重にもオーバーラップさせます。映像そのものは誰しもが目にした事のある夜の街の一風景に過ぎません。しかし、多様な背景を持つ人々が交差する歩道、きらびらかにライトアップされた店のショーウィンドウ、煌々と照らされ続ける工事現場、それら夜の街に浮かび上がる人為的な光源は、多層に重なり合うことで、くらむ程にまばゆい灯の集合体を形成します。映像に残る微細なブレは、暗闇に照し出された景観にゆらぎを生み、またいくつもの灯は、ゆるやかなスピードと共に移り変わる風景の残像のように、光のラインとして均一化されます。また、映像と同様に重ね合わされた騒音は、重複するごとにその厚みを増し、溢れ出さんばかりの音の洪水がホワイトノイズのように包括的な一つの響きとなっていきます。あたかも車が経路を一回りしているかのように時間軸を超えて接続された似て非なる風景の繰り返しは、次第に単一の光と音の塊へと変化していきます。映像を前にして、始めは淡々と過ぎゆく「日常」を無意識的に傍観するだけであったのが、いつしか、ひたすら円環し続ける「非日常」へと引きずり込まれていくのです。

スケジュール

2010年4月3日(土)〜2010年5月8日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

アーティストレセプション 2010年4月3日(土) 18:00 から 00:00 まで

入場料無料
会場児玉画廊|白金
http://www.kodamagallery.com/
住所〒108-0072 東京都港区白金3-1-15 1F
アクセス東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅より徒歩8分
電話番号03-5449-1559
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します