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新芸術校第1期成果展「先制第一撃」

ゲンロンカフェ
終了しました
いわゆる「千円札裁判」の発端となった前衛美術家・赤瀬川原平の作品《復讐の形態学》(1963年)には、「殺す前に相手をよく見る」という謎めいたサブタイトルがつけられている。「資本主義リアリズム」を標榜し、千円札を拡大して精巧に模写をしたこの作品が、「偽物」でも「本物」でもなく、千円札の「模型」なのだと語った赤瀬川の主張は、このサブタイトルにこそ要約されている。
ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校第一期は、「前衛の再設定」というテーマのもとスタートした。前衛がもはや、「炎上」というお手軽なスキャンダリズムと見分けがつかなくなり、アーティストといえば、不謹慎な一発ネタでネットのお騒がせものになるか、自らのナイーブな内面に閉じこもって「自己表現」を垂れ流す存在としか見られなくなった現代において、「前衛の再設定」とは、「相手をよく見る」ことからしか始まらないのではないか。そんな思いがあった。もちろん「前衛」の定義は様々だろう。その語の定義上、時代によっても、立場によっても多様に変わりうる。この一年、主任講師として私なりの定義は「講義」として語ってきたつもりである。しかし、この新芸術校という場で、そして成果展という展覧会において重要なのは、まさにいまここで、アーティストたちの手によって「再設定」が着々と進められている、ということなのだ。
アーティストは、芸術を、社会を、政治を、概念を、感情を、自らの作品と言葉によって「再設定」してよい。いやむしろ、手持ちの表現手段のすべてを総動員して「再設定」しない限り、アーティストという存在に居場所は用意されていない。軍事用語としての「前衛」に準ずるなら、彼ら彼女らは、それぞれの「再設定」によってはじめて、自らの「戦場」を見出すのである。
新芸術校では一年間、そのようなトライアルを繰り返してきた。この一年間、作品を制作することはもちろん、講師も受講生も、とにかく言葉を発し、議論を重ねてきた。交わされた言葉の数も、書かれた言葉の数も、標準的な美術教育におけるそれを遥かに上回っているはずだ。作品をつくり続けながら、文字通り言葉を尽くすこと、それこそが「前衛の再設定」を可能にする。
ここに並んでいるのは、そんなプロセスのなかで「相手をよく見る」観察者、批判者であろうとするアーティストたちの姿であり、世界に対して果敢に「再設定」を試みようとする饒舌な作品たちである。そしてそれは、それぞれが自らの「戦場」のなかで初めて発した「先制第一撃」なのだ。

スケジュール

2016年2月27日(土)〜2016年2月28日(日)

開館情報

時間
18:0023:30
休館日
火曜日、水曜日
入場料
展覧会URLhttp://shin-geijutsu.net/index.html
会場ゲンロンカフェ
http://genron-cafe.jp/
住所〒141-0031 東京都品川区西五反田1-11-9 司ビル6F
アクセス東急池上線・JR山手線・都営浅草線五反田駅西口より徒歩3分
電話番号03-5719-6821
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