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高石晃 「下降庭園」

clinic
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アーティスト

高石晃
1985年生まれの高石晃はねじれ、うねるように描かれた線や、真っ二つに引き裂かれた紙、階段やテーブルなどが描かれた絵画作品を作り出してきました。それらの絵画は空間の歪み、絵の具の盛り上げ、支持体の物理的切断などの極端な操作を行うことによって絵画構造の原初的なあり方をさらけ出しているようです。また高石は「わたしの穴 美術の穴」のプロジェクトを通じて、絵画作品の空間性を拡張し、庭や公園に掘られた穴による作品を制作を開始しました。高石は、穴と絵画は共に確たる実体はなく、見る人の認識の中にその根拠があるため、その構造は虚(イマジナリー)なものであると言います。そして穴と絵画の虚の構造を使うことで、人の認識や意識を支えている基盤である「精神」という不可視のものを捉えることができると考え、絵画と穴が構造的に持ちうる精神性に注目して制作を行っています。穴の精神性を考えるうえで高石が参照するのは二つの「穴」、榎倉康二・高山登・羽生真・藤井博による「スペース戸塚`70」における「穴」と、村上春樹の小説世界に登場する「穴」です。「スペース戸塚`70」は高山登の下宿先の庭にて1970年の11月から制作が開始され、12月5日から20日にかけて発表されました。そこでの穴を使った作品群は当時から注目され、それぞれの作家を語る上で不可欠な作品となっています。一方、村上春樹の小説「1973年のピンボール」には主人公が空き地に穴を掘るシーンが登場しますが、その時期は1970年の冬と設定され、奇妙なことにちょうど「スペース戸塚」が開催された時期と一致しています。高石はこの事実に触発され、その1970年という年の時代精神と「穴」の関係について思考してきました。そして戦後日本史のなかでも転換点といえる1970年に現れたこの二つの「穴」の構造を解析し、50年後の現在においてそれを発展させることで、今わたし達を取り巻く環境や精神のあり方を穴を通して示すことができるのではないかと考えています。今回、高石は三軒茶屋の商店街の中に診療所兼住宅として1965年に建てられ、スキーマ設計集団によってリノベーションされたスペース、clinicにおいて、裏庭に掘られた穴と室内空間を組み合わせた展示を発表します。タイトルの「下降庭園」という言葉には、わたし達の心の奥深くへの下降とするための庭園という意図がこめられています。人は都市の中につくられたその庭園を回遊することで、日常風景の下にある構造を発見し、同時に自らの内的な世界の中を探索することができるはずだと高石は言います。わたし達の意識や認識の下部構造であり、同時に社会や歴史の構造を支える基盤である「精神」の領域を「穴」によって具現化しようとする高石の試みを是非ご覧ください。

スケジュール

2019年5月10日(金)〜2019年6月9日(日)

開館情報

時間
カフェと屋外展示は8:00〜19:00
休館日
月曜日から金曜日は電話予約制
備考
金曜日・土曜日・日曜日、12:00〜18:00開館

クロージングパーティ 2019年6月9日(日) 19:30 から 20:30 まで

入場料
会場clinic
http://www.clinictokyo.com/
住所〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋1-33-18
アクセス東急田園都市線・東急世田谷線三軒茶屋駅南口より徒歩3分
電話番号050-5375-9572
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