アメリカ出身のルシェが、1960年代から1970年代に写真を用いて制作したアーティストブックは、後世のアーティストや写真家たちに大きな影響を与え、オリジナル作品の形式やタイトルを再解釈やイミテート、パロディー化した多様なオマージュ作品が生まれました。その数は、延べ100冊以上にのぼります。今回発表する『Every Building on the Ginza Street』は、ハリウッドの街路「サンセットストリップ」沿いのすべての建物を記録した蛇腹式の写真集『Every Buildingonthe Sunset Strip』(1966年)へのオマージュです。本作とともにたびたび言及される本のひとつとして、1954年に日本で刊行された『銀座界隈』の別冊『アルバム・銀座八丁』が挙げられます。京橋から新橋までを結ぶ中央通り、通称「銀座通り」沿いの両脇を鈴木芳一が撮影した一冊は、テーマやレイアウト、製本までルシェの作品と酷似しています。この本が欧米で知られると「ルシェはこの出版物を見たことがあったのだろうか、真似をしたのだろうか」※という疑問が生まれました。この問いに対して、ルシェ自身は回答を提示していません。ホンマは、『アルバム・銀座八丁』の舞台となった「銀座通り」を撮影することで、アーティストブックの金字塔への「返歌」を試みました。本展では、ホンマが撮り下ろした『Every Building on the Ginza Street』の制作プロセス、 そしてできあがった写真集とともに、ルシェによる『Every Building on the Sunset Strip』と『アルバム・銀座八丁』も展示いたします。※ Martin Parr、Gerry Budger『The Photobook: A History volume 3』(Phaidon、2014年) 152ページより引用。