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[画像: マーサ・ユングヴィルト『無題』 2019、油彩・ペーパーボード、25 x 38.2 cm © Martha Jungwirth
]

マーサ・ユングヴィルト 展

ファーガス・マカフリー 東京
終了しました

アーティスト

マーサ・ユングヴィルト
*ファーガス・マカフリー東京は6月2日(火)よりギャラリー営業を再開致します。

ファーガス・マカフリー東京は、3月28日(土)から6月13日(土)までオーストリア・ウィーンの作家、マーサ・ユングヴィルト(1940年生)の個展を開催いたします。最新の油彩画のシリーズに焦点を当て、彼女独自のアプローチで展開する色、動き、抽象表現をご高覧いただきます。

ユングヴィルトは60年にわたるキャリアの中で、彼女がコンセプチュアルな「理由づけ(pretext)」と呼ぶもの、つまり作品の本質を形作る、様々な情報源やモデルとの個人的な出会いから作品を生み出してきました。作家自身の旅の経験、ギリシャ神話、友人や仲間の登場、現代の政治的出来事から受ける印象は、神話的または普遍的な主題と混ざり合い、そして融合します。この展覧会の作品の多くは、彼女がギリシャで過ごした夏の時間をベースに制作された「デロス・シリーズ」からの絵画作品です。またペーパーボードが支持体となる作品からは、作家が台湾に訪れた際に受けた影響を読み取ることができます。彼女のスタジオに掛けられている、12世紀の宋王朝の国王の肖像画、その王が纏った赤いローブの色を見ると、それが明らかに作家の色選びに影響を与えていることが分かります。《Head》や《Mountain》のようにタイトルから何が参照されたかが明らかな作品もありますが、作品は題材の絶え間ない変容の中のひと時の状態を捉えた構図を描くに留まり、タイトルとなるものの形は微かに、また部分的にしか現れていません。ユングヴィルト独自の表現技法を定義する事は難しく、豊かな色と形がひらめき、躍動する作家自身の動きをはっきりと肌で感じられるような触覚性に満ちています。ユングヴィルトの特徴とも言える、活気あるブラッシュストローク、にじみ、絵の具の引きずり、線で満たされた作品は、絶え間なく変容を続ける彼女の純粋な創造力により創り出されています。言語化される事象と言語化される前の事象の間に存在し、私たちの意識的な解釈の枠を超えて作品は存在しています。

ユングヴィルトは、作家としてのキャリア開始当時から、戦後オーストリア美術史において唯一無二の役割を果たしてきました。1960年代および70年代のオーストリアの芸術は、ミニマル・アートおよびコンセプチュアル・アートの合理的な枠組みが支配的であり、またウィーン・アクショニストによる衝撃的で超男性的なパフォーマンスが支持を得ていた中で、ユングヴィルトは独自の道を歩み始めました。画像として認識される像が形成される前に存在する知覚のプロセスを追求し、疑問を呈し、紙の上での色とジェスチャーが直感的に使われる彼女の作品は、同時代アーティストの知的文脈に真っ向から対抗するものでした。ユングヴィルトは当時の伝統主義的なウィーン文化の中で、女性作家はこうあるべきだとされていた一般像に挑んだのです。ユングヴィルトは非常に独立した展開をみせていき、彼女が「感覚運動(senso-motoric)」と呼ぶメソッドに到達します。このメソッドについて、彼女は自身の言葉で、作品制作の方法を「言葉が話される前」、「記憶が存在する前」、そして「直線が消失点で交わるというユークリッド」さえもが存在する前のあり方に還元すること*1、と説明しています。

彼女の作品は、身体に関わる直接的なリズムのプロセスにより生まれます。アーティストの意図と、鑑賞者の解釈という二重のイリュージョンを意識した上で、彼女は知覚が私たちに一定の見え方を強制してしまう、そのさらに前の段階で表現を行うことを目指しています。ユングヴィルトは、紙、水彩、油絵具を使用します。透明度の高い絵の具で描かれると吸収性のある紙の表面にすぐに固定され、後から絵具を取り除いたり、修正を加えたりすることは出来なくなります。偶然的と意図的に見えるものの間を行き来し、具象、抽象と呼ばれる一般化された形態を超える彼女の作品は、彼女が自身を常に純粋に流動的で突発的な状態に保つことで生み出されるのです。彼女の最近の作品の官能的な色の強さは、自然、血、愛、かすかな光、消えていく影、時間などへの深い感情を連想させますが、その色使いは、視覚的存在として私たちの目の後ろに立ち現れる前、そして私たちの思考よりも更に前に、まるで記憶の閃光が胸の中でほとばしるかのように、染み出してきます。

作家の身振りによる抽象と具象を行き来する絵画は、活動初期から称賛を受けていたにも関わらず、ユングヴィルトが国際的に認知され始めたのは、アルベルト・ウールンのキュレーションによるエッスル美術館(Essl Museum)でのコレクション展からとなります。2014年にはユングヴィルトの回顧展がクンストハレ・クレムス(Kunsthalle Krems)で開催。2018年に同作家はウィーンのアルベルティーナでの大規模な個展に伴い、オーストリアの芸術家にとって最高峰の栄誉とされるオスカー・ココシュカ賞を受賞しました。今展覧会は、ユングヴィルトのファーガス・マカフリーでの3回目の展覧会となり、東京では初めての展覧会となります。
*1. 1988 年「Protokolle: Zeitschrift für Literatur und Kunst」発行の「The ape in me」より

スケジュール

2020年3月28日(土)〜2020年6月13日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://fergusmccaffrey.com/exhibition/martha-jungwirth-fmt/
会場ファーガス・マカフリー 東京
http://fergusmccaffrey.com/exhibitions/
住所〒107-0061 東京都港区北青山3-5-9
アクセス東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A3出口より徒歩3分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩11分
電話番号03-6447-2660
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