自身の結婚をモチーフにした作品「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」などで知られる遠藤麻衣は、映像、写真、演劇などのメディアや方法論を横断しながら、いまここにある身体が発するメッセージと、社会規範や芸術のフォームとのずれを遊戯的に重ね合わせて表現をしてきた美術家、俳優です。近年では、批評家・キュレーターの丸山美佳とともに日本発のクイア系アートジン「Multiple Spirits(マルスピ)」を発行し、オーストリア女性芸術家協会(VBKÖ)での展覧会「When It Waxes and Wanes」の企画なども行っています。
百瀬文は、見ることと見られること、語ることと語られることの非対称性を映像によって自己言及的に問い直し、主体の揺らぎやフォノセントリズムの不確かさを露わにするとともに、他者との交感が空転しつつも発現するコミュニケーションの強かで多様なあり方を示す作品を制作してきました。近年は、ACCの助成を受けてニューヨークで滞在制作を行ったほか、ベルリンや東京で個展を開催、またイム・フンスンと共同制作した『交換日記』が全州国際映画祭に正式招待されるなど、国内外で活動を行っています。
演じることと身体、眼差しと欲望、ジェンダーとセクシャリティについて、多様な角度からアプローチを重ねてきた遠藤と百瀬は、本展覧会において「理想の性器」をひとつのキーワードに共作を発表します。マスキュリンな言説の凝りをほぐし、軽やかなおしゃべりや転化を軸として構成される本展は、男と女、自然物と人工物などに二分されることのない、新たな性のあり方が実践されます。ぜひご期待ください。