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[画像: 2020_Martin Eder_Trancelucense_KOENIG TOKIO_Tokyo_Japan]

マーティン・エダ― 「TRANCELUCENSE」

ケーニッヒ・ギャラリー
終了しました

アーティスト

マーティン・エダ―
ケーニッヒ東京は、ベルリンを拠点に活動するマーティン・エダーの新作ペインティングによる個展「トランスルーセンス」を開催いたします。
本展において、エダーは夢の不可視性について探求します。作家にとって、「トランス−ルーセンス1」という言葉遊びは、夢やもしくはヴァーチャル世界といった実体のない現実へ消え入る、もしくは重なっていくさまを表します。眠っている、または白昼夢を見ている人々のポートレイトからなるシリーズにおいて、彼は私たちのリアル、ヴァーチャル、もしくはアナログのモデルが持つ半透明性と戯れます。また催眠術師としての経験を持つエダーは、ファンタジーのコミックや映画、ゲーム・オブ・スローンズといった偽りの歴史のシリーズ、さらにはゲームやコスプレといったヴァーチャルなパラレル世界に自身の詩的アバターを見出します。

彼は構成されたものとしての私たちが積み上げてきた歴史や同時代の現実のふたしかさに対して疑問を投げかけます。そのような現状において、私たちは作家が「恒久催眠」と呼ぶ、永続的な催眠状態にあるといえるでしょう。

エダーの作品はコード化されたアイロニーとして読むことができます。それは当時の文化に対する鋭く皮肉的な抵抗であると同時に、同時代における具象的な絵画やインスタレーションでもあるノイエザッハリヒカイト2とという表現と重なり、社会的秩序の中で深い憂鬱に悩まされている状態とも解釈できます。
エダーは形而上学的な疑問に関心を向けます。それは現実の基本構造および原則の包括的な理解の追求であるといえます。人間の本質を構成するのは一体何でしょうか?存在とはすべての物質が同時に形を同じくしたり変えたりする状態であるといえます。この「ここにある」ことの対概念は「なにもない」ことであり、それは「ある」という状態の外側ではなにも存在することができないことを考えれば自明であるといえます。2018年にロンドンのニューポート・ストリート・ギャラリーで開催されたマーティン・エダーの個展「PARASITES」のカタログに寄せた文章の中で、ヒュー・アランは「混沌と秩序はともに存在し、そしてこの二項対立の存在がまさしくマーティン・エダーのペインティングにおいて感じられる」と述べています。

バーバリアのカトリックの家庭で育てられたエダーはそのペインティング作品を通して、私たちに羞恥やモラル、さらには宗教や信念との関係性を気づかせます。そこでは古いものが新しいものと出会い、また善と悪の邂逅が見られます。悪は本来的に受け身で、通常よりも大きく、神の眼のような眼差しを与えられた、−ときには人間の特徴を備えた姿に変えられることもある−ありきたりなペットの猫の姿として人格化されます。エダーは秩序を神話的な視点に加え現代的な観点からも捉えます。そして心理的に熱を帯び、私たちの精神のむき出しの神経に触れるような元型となるイメージを創り出します。

それは私たちに、集合的無意識についてのユングの文章を思い起こさせます。「集合的な無意識は神話的なモチーフと原初的なイメージから構成されるゆえに、あらゆる国の神話が真実性を帯びる」と彼はいいます。また一般的に神話が集合的無意識の投影として捉えられる、とも述べます。これは無作為に散りばめられた星が、人々が想像を投影することで星座になることを考えれば明らかでしょう。エダーのペインティングはこのような混沌としたさまによって人々の心を掴んでいるが、そのまとまりのなさは彼の作品の中で母性的な優しさに溢れる女性像が演じる重層的な物語によって生み出されます。

1. 本展タイトルの「TRANCELUCENSE」は造語。半透明を意味する「Translucence」の「Trans- (越える)」が「Trance- (恍惚)」に代えられている。
2. 新即物主義。第一次世界大戦後に勃興した美術運動で、それまでの個人の内面を探る表現に対し、人間を即物的に描いた。

スケジュール

2020年3月6日(金)〜2020年4月12日(日)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、火曜日
入場料無料
会場ケーニッヒ・ギャラリー
住所〒104-0061 東京都中央区銀座3-5-4 MCM GINZA HAUS 1 6階
アクセス東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅8出口より徒歩1分、東京メトロ丸ノ内線・銀座線・日比谷線銀座駅A13出口より徒歩1分、東京メトロ日比谷線・都営浅草線東銀座駅A8出口より徒歩4分
電話番号03-5524-7177
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