終了した展覧会・イベントです
[画像: 宮原嵩広 missing matter (floating void)、2019、Photo by Ichiro Mishima]

「In a Grove」

LEESAYA
終了しました

アーティスト

髙橋銑、二藤建人、宮原嵩広
本展覧会のタイトル“In a Grove”は関係者の言うことが食い違って、真相がわからないことを意味する「(真相は)藪の中」という日本のことわざから引用したものです。この言葉は文字通り、芥川龍之介の『薮の中』という短編から由来していて、盗人に襲われた夫婦の事件を目撃者や当事者たちが検非違使(*現在の裁判官)に向かって、一人ずつ「真相」を語っていく形式で物語が進んでいきます。結局のところ、それぞれの供述内容は食い違っていて、最後まで誰の話が本当かは分からない、というあらすじです。ひとが言葉でイメージや状況を語ることで現実は立ち現れますが、それを誰もが等しく認知するのはとても難しいことです。そもそも現実や記憶は語られることで虚構化してしまう、という性質を孕んでいます。

我々は日常的に様々なデバイスを使い、大量の情報を受け流しています。忙しない現代人にとって、実際にその場所に赴き、目で見て、匂いを嗅ぎ、音を聴き、肌で空気を感じることはとても難しくなりました。コロナ禍では一層それ自体が貴重で尊いものだと我々は痛感しました。要するに、私たちは「本当のところ」どうだったか、ということをほとんど知らずに過ごしているのではないでしょうか。SNSでは懇切丁寧に実況中継が行われ、まとめサイトでは要点のみが分かりやすく省略され、フェイクニュースが横行し嘘が誠になる時代に、実感を伴う感動や、共鳴する熱はいかに手に入れることができるのでしょうか。誰かの記憶の寄せ集めで平均的な現実が構築され、その上で社会システムが淡々と進んでいく中、利便性と引き換えに現代社会はなにを得たのでしょうか。

髙橋銑、二藤建人、宮原嵩広という3名のアーティストは、それぞれの作品を通して、世界を実感し、正確に捉えるための試行を続けています。髙橋銑は自分の存在そのものさえも疑いを持ち、等身大の自身をモチーフに事物の不確かさを鑑賞者に提示します。他人から教わってきたことがあなたの真実になってはいないか、実際のところはどうか、「本当にそう思う?」と高橋の作品は私たちに問いかけます。二藤建人は現代において獲得しにくい「実感」を、自ら過剰なまでに体験することで追及し続けます。言語化し理解する過程に取りこぼした感情や感覚を、世界と激しく触れ合うことで再確認します。彼の愚直なまでに真摯な態度は、今こそ必要な世界への向き合い方なのかもしれません。宮原は目の前にあるものの常識をすべて裏切り、我々がいかに「見ていない」か、ということを作品を通して露わにします。通信技術の発達に伴い、膨大な情報を処理する中で、表面的に得ることのできる本質の脆さを宮原の作品は突きつけます。

本来、東京五輪が開催される予定であったこの2020年の夏に、まるで「藪の中」にいるような我々がどのような態度で世界と向き合うべきか、3名の作家による作品を通して考えを巡らせたいと思います。グループショウ“In a Grove”を是非ともご高覧ください。

スケジュール

2020年7月23日(木)〜2020年8月23日(日)

開館情報

時間
12:0019:00
日曜日は17:00まで
休館日
月曜日、火曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://leesaya.jp/exhibitions/in-a-grove/
会場LEESAYA
http://www.leesaya.jp/
住所〒153–0064 東京都目黒区下目黒3-14-2
アクセス東急目黒線不動前駅より徒歩7分、東京メトロ南北線・都営三田線・東急目黒線・JR山手線目黒駅正面口より徒歩20分
電話番号03-6881-4389
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