終了した展覧会・イベントです
[画像: Hilmi Johandi, Landscapes and Paradise V (Poolscapes), 2020, oil on linen, 170 x 130 cm]

「シンガプーラ」

オオタファインアーツ
終了しました

アーティスト

ザイ・クーニン、ヒルミ・ジョハンディ、グオリャン・タン 、リャオ・ジエカイ、ジェイソン・リム
このたびオオタファインアーツでは、グループ展「シンガプーラ」を開催します。サンスクリット語で「ライオンの町」を意味するシンガプーラ。シンガポールの国名の由来となるこの言葉を冠した今展覧会では、シンガポール作家5名の作品を紹介します。同国の出身でありながら年齢もメディウムも題材とする文化背景も違う5名のアーティストを通じ、シンガポールの持つ数奇な歴史、それによって育まれた文化の多様性、そして国家の変容を読み解きます。

シンガポールを代表する作家ザイ・クーニン(1964年生れ)は、イスラム化の過程で変化してしまった伝統的マレー文化、とりわけ南シナ海ボルネオ近くに位置するリアウ諸島の原住民オラン・ラウト(海のジプシー)を題材に活動しています。ザイの代表作である籐を組み合わせてマレー王の船を模した大型インスタレーション作品は、2017年のベニスビエンナーレのシンガポール・パビリオンで展示後、金沢21世紀美術館にも巡回しました。今展では同じく籐を用いた立体作品に加え、リアウ諸島の海と日本を結び文化の交流をもたらしてきた海流「黒潮」にちなんだドローイングシリーズ《オンバ・ヒタム》を展示します。

ヒルミ・ジョハンディ(1987年生れ)は、シンガポールのより近代の歴史に焦点を当てて作品を制作します。《Landscapes and Paradise (Poolscapes)》では、豊かな緑に囲まれた青いプールサイドでくつろぐ女性を描くことにより、シンガポールの持つクリーンで自然豊かな楽園というイメージを描き出します。しかしよく見てみると、植物や椰子の背景は薄い板の上に描かれた虚構であることがわかります。1960年代から90年代の映像、ポストカード、写真などの資料を題材に描かれるヒルミの絵画は、魅力的な楽園のようでありながら人工的なシンガポールの光景ははたして架空のものなのか、そして形に残される公的な歴史とはどれほどの真実性を持ちうるのか、といった疑問を投げかけます。

映像作家であるリャオ・ジエカイ(1984年生れ)は、祖母の葬儀中に撮影した動画を元に映像作品《Silent Light》を制作しました。16mmフィルムで撮影されたセピア色の画面にシンガポールの街並みが映し出されるこの作品では、年老いた一人の女性が自身の半生を回想します。記憶は1940年代シンガポールが日本の占領下にあった頃から始まり、マレーシアで共に育った中国の親戚の話や、海南島での日々、そして自身の死生観が、ゆっくりと諭すように語られます。このような多民族的な文化背景は今でもシンガポールの一般的な家族構成として存在しており、作品を通じてリャオはシンガポールの国としての独自性を問いかけます。

グオリャン・タン(1980年生れ)は筆を用いて直接跡をつけるという手法から距離を置き、新しい抽象表現と向き合います。《AmpibianWisps》では顔料を薄めたものを傾けたキャンバスの上で泳がせ、その過程を通して色の滲みや跡を作り出します。支持体の布や合成繊維を切り貼りし重ねることにより作り出される独特な透過性は、版画やコラージュといった絵画以外の手法を想起させ、タンの平面表現に対する多様なアプローチを感じ取ることができます。タンの興味は、それがどう私たちの時間や身体、記憶に関する感覚を形作り、また導いていくのかという問いに根ざしています。

ジェイソン・リム(1966年生れ)は陶芸、インスタレーション、パフォーマンスアートを探究し、時にはそれらを融合させて作品を制作します。リムは、権力者らが地域に根付いた文化や文脈をないがしろにして発展を追求するシンガポールの状況を告発するような試みを行うほか、自身を取り巻く自然環境からインスピレーションを得ることも多く、代表作には東南アジア地域に見られるガジュマルの木を基に作られた立体シリーズがあります。今展では2012年に滞在した中国西安でのレジデンスプログラム後に制作された炻器シリーズ《Landscape studies》を紹介します。中国の伝統的な水墨風景画に描かれるような景観を炻器で再現した当シリーズでは、縦構図のなかに木々の様子や川の流れが有機的に表現されています。
今グループ展が作家個人や個々の作品、そしてシンガポールへの理解を深め、国家や歴史、文化や民族とは何なのかを考える機会を提供できれば幸いです。

スケジュール

2020年10月10日(土)〜2020年11月21日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttp://www.otafinearts.com/jp/exhibitions/2020/Singapura/
会場オオタファインアーツ
http://www.otafinearts.com/
住所〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3F
アクセス都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅1a・1b出口より徒歩1分
電話番号03-6447-1123
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