終了した展覧会・イベントです
[画像: Etsuko Yakushimaru「わたしは人類」]

「ヒストポリス - 絶滅と再生 - 展」

GYRE GALLERY
終了しました

アーティスト

やくしまるえつこ、ヤリラ・エサディ、Synflux、BCL / Georg Tremmel
*GYRE GALLERYは6月8日より開館します。
人工知能やゲノム編集、原子力発電(1963年日本初の原子力発電実施)などの到来は、今や科学技術が政治、経済、生活、制度など社会組織のあらゆる側面にかつてないほどの影響を与えていることを証しており、人類の様々な課題を解決すると同時により複雑な問題をも派生させている。そして、ウイルスを原因とする伝染病は、約12,000年前の新石器革命で人間の行動が変化し、人口が密集した農業共同体が形成されて以来始まった。中国で流行し始めた呼吸器疾患に関連するウイルスのゲノム塩基配列について報告する論文が、2020年2月に総合学術雑誌『ネイチャー』で発表された。このウイルスは、呼吸器疾患の初期症例に関係する海鮮市場で働いていた患者から分離されたと言われている。そのゲノムの解析により、中国で生息するコウモリにおいて同定されていたSARSコロナウイルス群に近縁なウイルスであることが明らかになった。これが現在世界規模で蔓延しつつある新型コロナウィルスである。この状況下で、今、なぜ本展覧会が開催されることとなったのかという意味と問いを投げかけていきたい。

本展は、ゲスト・キュレーターとして髙橋洋介氏を迎え、監修者の飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長/ジャイル・ギャラリー ディレクター)とともに企画構築したものである。工学的にデザインされた、これまでとは別の次元の自然が立ち現れつつある。それは同時に、技術が生命や生態系に溶け込み、あらゆるものを侵食していく現代において、人間が「絶滅」の危機といかに向き合うかを問いかけることとなる。さらに、カオスの中で変態する時代状況の一端を映し出し、地球史における人類の存在理由を参加アーティストの作品を通して未来的展望にいかに結びつけていけるかを展覧会の主旨としている。

最後に果てしなく展開していく科学技術に対する警鐘を鳴らすことを忘れてはならない。1986年のドイツでエネルギー問題や原子力発電の是非が議論されていた頃、社会学者のウルリッヒ・ベック※は、科学技術が生み出した危険を科学技術によってコントロールする私たちの社会のありようを「危険社会」と名付け警告したことを記憶に刻んでおきたい。また、福島第一原子力発電所の事故は、地球上で最強の放射線耐性が確認された《デイノコッカス・ラディオデュランス》という微生物を副産物として生みだした。微生物の視点によって浮かび上がる人間像とは?このような視座には、本展のテーマでもある「人類の絶滅」というメタファーが織り込まれている。「3.11」以降、原発をはじめとして高度技術によってもたらされた様々なブラック ボックスが日本に遍在していることは、人々の将来的な不安対象となっている。そして、今や新型コロナウィルス〈COVID-19〉の感染蔓延が喫緊の課題となっており、人類の絶滅と再生、さらに「ネクロポリス」(死者の都市)と「ヒストポリス」(生命を宿す都市)の問題を現実的に浮かび上がらせている。
飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)

※ウルリッヒ・ベック(1944-2015)
ポーランド北部生まれ。ミュンスター大教授などを経てロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会学教授を務めた。現代社会が抱えるリスクを警告した著書『危険社会』(1986年)や『世界リスク社会論―テロ、戦争、自然破壊』(2003)で知られ、ドイツを代表する社会学者。東京電力福島第1原子力発電所事故を受け、脱原発を提言したドイツ政府の諮問機関「倫理委員会」のメンバーも務めた。

スケジュール

2020年6月8日(月)〜2020年9月27日(日)

開館情報

時間
11:0020:00
入場料無料
展覧会URLhttps://gyre-omotesando.com/artandgallery/histopolis/
会場GYRE GALLERY
https://gyre-omotesando.com/art/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
アクセス東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩4分、東京メトロ半蔵門線・千代田線・銀座線表参道駅A1出口より徒歩5分、JR原宿駅表参道口より徒歩6分
電話番号03-3498-6990
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します