終了した展覧会・イベントです
[画像: Miya Ando, Unkai (Sea Of Clouds) May 22 2021 5:47 AM NYC, 2021, ink on aluminum composite, 121.9 x 121.9 cm]

ミヤ・アンドウ 「Mugetsu (Invisible Moon)」

MAKI(天王洲 II)
終了しました

アーティスト

ミヤ・アンドウ
この度MAKI Galleryでは、ニューヨークを拠点に活動するミヤ・アンドウの2度目の個展となる「Mugetsu(Invisible Moon)」を天王洲 II にて開催します。アンドウは約1年前、天王洲 I・II のギャラリースペースに渡るMAKI Gallery最大規模の展覧会を開催し、絵画、彫刻、インスタレーションなどの作品群を発表しました。本展では、作家の代表作である「Kumo (Cloud);雲」「Unkai (Sea of Clouds);雲海」シリーズ、そして「Shou Sugi Ban;焼杉板」と作家が名づける彫刻作品に焦点を当てています。

アンドウは日本文学や歴史書を研究する中で、月の光や雨、雲など、自然が見せる様々な表情を描写した、詩的で幾層にも及ぶ意味を持ち合わせるような日本語の表現と出会いました。アンドウが強い関心を持ったこのような歴史的な表現は、あらゆるものの存在の意味を哲学的に考え、自然と人間との関係を示そうとするものですが、現代ではあまり使われていません。そのためアンドウは作品を通してこのような表現を視覚的な形に変換し、保存しようと試みています。アンドウが見出したこれら日本語の表現は、作家の多言語で構成された作品のタイトル(日本語と英語)の中に見ることができます。日本語とその意味に近い英語を併記することによって、アンドウは彼女自身のアイデンティティと経験を育んだ、二つの文化間における思考や認識の違いを表現しています。西洋の思想にはないニュアンスを含んだ日本語による自然の描写の仕方が、アンドウの作品のインスピレーションとなっているのです。

そのような表現の一つが、本展のタイトルである「無月」です。無月とは、旧暦8月15日に観測される一年で最も明るい満月、「中秋の名月」が雲で覆い隠されてしまう様子を指します。静かで思索的な展示空間に足を踏み入れると、鑑賞者は、雲で覆われた月の見えない空を見上げているような気持ちになります。アルミ複合材が持つ光を屈折させる特徴により、移ろいゆく光は柔らかく反射され、描かれた雲たちは絶え間なく移動しているように見えます。また、新作の多くは一日の特定の時間や特定の季節、または特定の場所を連想させるような独特の色合いが特徴です。雲は移ろいゆく自然の儚さ、無常さを象徴することから、アンドウの作品に頻繁に登場するモチーフです。そこには禅宗の概念である「無」という言葉が重要な役割を果たしています。英語ではʻnothingnessʼ(何も存在しないこと)のように訳されますが、アンドウはこの無という言葉を「この世界を構成するあらゆるものに永続的な性質や実体はなく、すべてが一時的なものであるという、現実世界の根本的な性質に対する認識が含まれている」と捉えているためです。

アンドウの彫刻作品はこの「無」という概念に対する探求の一部であり、再生木材と硝酸銀を用いて自然のサイクルと過ぎ行く時間に考えを巡らせています。アンドウは日本文化の中で長い歴史を持つ松をシンプルで幾何学的な形にカットし、部分的に硝酸銀を塗布したり、日本の伝統的な技法である焼杉と呼ばれる加工を施したりして、作品を制作してきました。何の加工も施していない部分は、木目をはじめとする木の個性が際立ちます。対照的に、自然に光を反射する硝酸銀の仕上げは、アルミ複合材の絵画作品と同じように周囲を映し出す鏡面効果を持ちます。木材の半分を焦がし、半分を硝酸銀で塗った作品は、光を反射するものと吸収するものという二つの相反する性質を提示しています。各作品は刻一刻と移りゆく時間を保存しようとする試みであり、年輪を露出させることでその木の長い歴史を明らかにします。アンドウは木が生きた時の流れを作品の中に示すことで、私たちに流れゆく時間に対する考察を促しているのです。これらは有機的な素材と無機的な素材を組み合わせながら、自然、そして人間の存在の儚さ、一時性を追求するアンドウの試みに他なりません。

スケジュール

2021年9月15日(水)〜2021年10月13日(水)

開館情報

時間
11:3019:00
休館日
月曜日、日曜日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.makigallery.com/exhibitions/5400/
会場MAKI(天王洲 II)
https://www.makigallery.com/ja/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA ART COMPLEXⅡ1F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩7分, 東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩8分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩3分
電話番号03-6810-4850
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します