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迫鉄平 「POOR, VIDEO, ANYTIME GOD」

スプラウト・キュレーション
終了しました

アーティスト

迫鉄平
*緊急事態宣言が発令されたため、5月11日までの間、下記時間帯でのアポイントのみでの開廊、それ以外はクローズとさせていただきます。ご予約方法・詳細は公式ホームページよりご確認ください。
木曜-土曜 13:00–19:00 / 日曜 13:00–17:00 / 定休 月・火・水曜

迫鉄平のスナップはこれまで動画としてアウトプットすることで、そのメディアフォーマットの操作性が評価されてきました。本展では、スナップ写真を静止画像として初めて展覧会形式で作品化を試みます。

一連のスナップは、2020年4月の緊急事態宣言により外出制限を余儀なくされたとき、自身が住む相模原市・橋本付近を連日うろつき撮影されたもので、そのうち10枚ずつを毎日Tumblrにアップするという作業は2021年春現在も継続しています。

シリーズタイトル”POOR, VIDEO, ANYTIME GOD”はRADIOHEADの“Hail To The Thief”のカバーアートから再サンプルしたものです。そして副題として「撮り捨てスナップ」と添えられてあるように、確かにそれは一見凡庸で冗長なイメージの連続ですが、しかし改めて検証してみると、意外にも写真家としてのジャン・ボードリヤールにその接続点を見いだすことが出来るのです。

ジャン・ボードリヤール(1929-2007)は言うまでもなく哲学者ですが、1980年代に日本でコンパクトカメラをプレゼントされたことをきっかけに写真を撮り始め、やがてそれは趣味の域を超え、自らの写真と写真論を『消滅の技法』(1997 年パルコ出版)という著作として残すまでに至ります。
『おそらく写真を撮りたいという欲望は、次の事実を確認することから生まれてくるのだろう。––―意味の側から全体を俯瞰してみた世界は、まったく失望を誘うものであるが、不意に細部を見たならば、世界はいつでも完璧に自明の存在である、ということを。』
このフレーズが象徴するように、『消滅の技法』はボードリヤールの一連の著作とは異質で、その内容はむしろ一貫して実在論的であり、認識主観の中心である人間の主人性の外部を美学的に論じた極めて今日的な論考と言えます。このテキストに倣えば、そうした主体を「消滅」させ「上手すぎる写真」を飄々と回避する迫鉄平の「撮り捨てスナップ」に、この世界の自明性の一端を見ることは十分に可能なのです。

剥き出しの構造物とその空隙、広告やサイン、落書き、道に捨てられたキッチュなパッケージ、アスファルトの水たまりやガラスの反射、夜間の強烈な照明などが唐突に風景を分断し、人工的な自然と無節操に交わるこの世界の姿。そうした資本新世の異形が立ち現れるのが、画面中心だけでなく画面の辺縁であることが迫鉄平のスナップの特徴であり、またボードリヤールとの接続点でもあります。

本展ではその「画面辺縁のイメージ」も重要な要素として扱っています。雑誌の見開きのように構成した作品において、片方のイメージの中心部が捨象され空白となることで、元のイメージが意味を失い、辺縁のイメージとともに抽象化されます。そしてもう一方にその空白の補完を促すように、同じサイズで別のイメージが併置されています。

それはたんにスキゾフレニックで虚無的な視覚の戯れでも、また中平卓馬を今様に継承したのでもなく、再びボードリヤールのこのフレーズに集約されるでしょう。
『ひとつのイメージは別のイメージに、一枚の写真は別の写真につながる――隣接する断片の数々。そこには『世界観』も視線もない――世界はそっくりそのまま細部の中に屈折する。』

スケジュール

2021年4月16日(金)〜2021年5月16日(日)

開館情報

時間
13:0019:00
日曜日は17:00まで
休館日
月曜日、火曜日、水曜日、祝日
備考
事前予約制
入場料無料
展覧会URLhttps://sprout-curation.com/exhibitions/3582
会場スプラウト・キュレーション
http://sprout-curation.com/
住所〒162-0812 東京都新宿区西五軒町5-1 エーワビル 3F
アクセス東京メトロ東西線神楽坂駅1番出口より徒歩6分、東京メトロ有楽町線江戸川橋駅4番出口より徒歩7分、都営大江戸線牛込神楽坂駅A3出口より徒歩10分
電話番号03-3642-5039
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