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[画像: 中村一美 「織桑鳥」2003年 Watercolor and gouache on paper 16 1/4 x 12 1/2 inches (41.3 x 31.7 centimeters) © Kazumi Nakamura, Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo]

中村一美 展

BLUM
終了しました

アーティスト

中村一美
※本展示は事前予約制となっております。詳細は公式ホームページよりご確認ください。
Blum and Poeは、当ギャラリーでは三度目となる中村一美による個展を開催いたします。

本展では、これまでほぼ未公開であった紙を支持体とする「絵画作品」と1980年以降継続して取り組んできたキャンバス作品のシリーズ群を同時に紹介いたします。本展では並列的な展示構成によって作品の中に新たな対話を生み出し、中村がその作品群におけるコンポジションを構築する上で、どのようにして連続的で反復的な方法論が用いられてきたのかを明らかにしていきます。また、制作日が記された紙作品の多くからは、作家の日々の制作における心理を反映した記録的な側面をうかがい知ることができるでしょう。

中村は、シリーズ中の複数の作品の間に生じるバリエーションや差異を「示差的イメージ」と提唱した作家です。決まったモチーフに繰り返し描くその手法は、アメリカやヨーロッパで新表現主義が花開き、日本ではニュー・ペインティングが台頭する中で生まれました。アメリカのモダニズム的視覚言語によって、東アジア的なモチーフやその絵画の空間表現を再解釈しようとするその試みは、独自性を有しながらも美術史との相関性を持った作品として成立しています。同時に、中村は、日本の土着性の中で地域的独自性を持った要素を用いて西洋絵画を発展させていくことによって、西欧中心的なディスコースに立ち向かい続けてきました。本展では、特に1980年代より取り組んできた初期の作家の実践を示す「Y型」や「斜行グリッド」を用いたシリーズの中でも希少な作品群が展示されます。その作品中にたびたび現れるY字の記号は地図記号で桑畑を意味し、地形学についてのフォーマリスティックな参照を表しています。中村にとって、Y型とは作家の母方の生家にあった桑の木々と結びついた非常に個人的なモチーフでもあり、さらには1960年代以前の母方の家業であった養蚕業の衰退の歴史を想起させる社会政治的な意味性を持った要素なのです。その一方で、幾何学的抽象を描いた斜行グリッドの絵画作品は、日本に古くから存在する絵巻に特徴的な平行的な視線の動きについての再解釈から生まれました。自己完結した自律性を持った客体としての美術作品に重きをおく西欧のモダニズム美術に特徴的な正面性を持った縦横構造のグリッドとは対照的に、このような斜行グリッドは観る者の視線を構図の外へと向けさせることで絵画における新たな意味性を作り出してきました。

さらに2000年代以降は、鳥の形態を繰り返し描いた「織桑鳥 (フェニックス)」・「存在の鳥」といったシリーズにも取り組んできました。重厚なテクスチャーによって描かれた作品群は、存在の定まらない両義性を示唆する抽象化された鳥を記号的に描くことによって論理性を持ったグリッドからエモーショナルな抽象性への中村の取り組みの変化を見せています。「織桑鳥」というタイトルは、不死鳥の個人的な解釈の形として、「織物業」や「桑」や「鳥」の日本的な特性を結びつけた中村の造語です。この世には存在しない鳥についての数々の神話は古代エジプトや中国においてはるか昔から存在し、特に19世紀以降日本文化の中にもエジプトの「不死鳥」の神話が導入され、「鳳凰」という古代中国から日本へと伝わった吉兆をもたらす縁起の良い鳥の概念と共にたびたび語られてきました。死後の再生を表すこの不死鳥は中村にとって個人史と強く共鳴する心理的なモチーフであり近代において廃れてしまった養蚕業の再生、ひいては全ての衰亡したものへの再生の願いとして描かれています。一方で、「存在の鳥」は中村が登山の際に遭遇した山頂から下方へと飛んでいく鳥の様子から着想を受けたことで生まれたシリーズです。中村は、「飛翔」とは、人類全てにとっての悪災や悲劇に打ち勝つための手段を象徴する概念であると考えてきました。本シリーズは、初期作品からの引用となるY型の繰り返されるモチーフによるコンポジションが、空想上の鳥の図像の5種類ほどのマトリクス (母型) を基本形として描かれています。韓国の民画や始祖鳥の化石あるいは鳥という象形文字に見られる、鳥の原型を取り入れたこれらのイメージ群は、中村が述べるように「究極的な示差性を持つ絵画を描く」ことを可能にするのです。

スケジュール

2021年6月5日(土)〜2021年8月7日(土)

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
備考
事前予約制
入場料無料
展覧会URLhttps://blumandpoe.com/exhibitions/kazumi_nakamura_tokyo
会場BLUM
https://blum-gallery.com/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森 5F
アクセスJR山手線原宿駅竹下口より徒歩1分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅2番出口より徒歩2分
電話番号03-3475-1631 
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