IG Phto Galleryでは2021年5月11日(火)より楢橋朝子展「ただよえど沈まず」を開催いたします。
楢橋朝子は1989年より個展を中心に写真作品を発表してきました。初期はモノクロによるなまめかしくも不穏な世界を探求し、最初の写真集『NU・E』はその集大成となりました。続く写真集『フニクリフニクラ』ではカラーに転じ、明るい光の中に何かが潜んでいると感じさせるイメージを捉えています。直感的に現実を捉えるスナップショットの手法を用いながら、現実とほんの少しズレた世界を描くその作品世界は、シュルレアリスムに代表される幻視者の系譜に連なるといえるでしょう。
今回展示される作品は、写真集『half awake and half asleep in the water』から始まった、水面にたゆたいながら陸地を臨み、シャッターを切ったシリーズの最新作です。
これまで楢橋は、日本各地の海や川、湖のほか、海外ではアムステルダムや珍島、ドバイなど、国内外の海や川、湖に入り撮影を行ってきました。今回発表するのは2019年9月に訪れたギリシャのミロス島で撮影した作品です。光あふれる美しいエーゲ海と、真っ青な空にはさまれた陸地にカメラを向けた楢橋は、とどまることなく揺れ続ける波に翻弄されながら、シャッターを切っています。
人間の力ではあらがいがたい、揺れ続ける水面で写真家が見ようとしたもの、写真にとどめたものは何なのか。揺らぐことのない陸地にいることを忘れ、ただようようなまなざしで作品をご覧いただければ幸いです。