終了した展覧会・イベントです
[画像: © Soshi Matsunobe, 2021. Ghost of Copy (Gray) #21, Photograph.]

松延総司 「Ghost of Copy」

The Container
終了しました

アーティスト

松延総司
この度ザ·コンテナーでは、日本人アーティスト松延総司の「Ghost of Copy」展を開催し、サイト·スペシフィック·インスタレーションを展示します。松延の「Ghost of Copy」シリーズでこれまで発表されてきた80枚ほどの写真は、照明が落とされ、小ぢんまりとした雰囲気の展示環境を活かしたインスタレーションで発表されます。作品は、松延が滋賀の農村に置く作業場やスタジオ、周辺の自然、陶芸工房など、彼の日常生活に存在する様々なものとその模様を描写しています。

「無形のもの」を捉えること。それは松延総司が変わることなく追求してきたテーマである。影を追っては、穴を探検し、隙間を調査しては、コンセプチュアル・アートの理論やミニマリストのモデルを使い、地「面」(または背「面」であろうか)を描いてきた。空間の物理性、あるいはその欠乏、箱や輪ゴムや小石といった、ほとんど注目されることのない、日常に存在する万物の美しさに対して、確かな関心を抱き、10年にわたって、彫刻やインスタレーション、ドローイング、写真の制作に取り組んできた。

点同士を接合する線、そして抽象の理論に対する興味の先には、松延総司の作品の根本的な特徴として、空間を静かに占める「虚無」がある。何かが「空」であることの荘厳な様子や、空白が醸す優雅、それらの流動的な状態を捉えようとする緻密な努力。松延の作品の魅力は、芸術とは硬直性や自己完結性に囚われず、変容しうるものであるという信念と、その無限性を表現していることにある。作品の美しさは、作品を生み出す制作過程と同様に、その捉えどころのなさに由来している。これらの作品は一瞬の静けさや、何かを沈思する瞬間を象っているのではないか。

作品の多くからは「無限性」が感じ取られる。決して掴めない影、見えそうで見えない光など、流動性が表現されている。例えば、手書きの斜線で埋め尽くされた壁紙や看板は、幾何学的なのか、有機的なのか。一見、具象的なようでもあるが、確実に抽象的であり、白黒(距離を取ると灰色に見える)の無限なシーケンスを創り上げているが、それはブラウン管アナログテレビの砂嵐(ノイズ)でランダムに現れる点のピクセル模様にも似ている。それなのに、近くでまじまじ見てみると、シンプルで優雅な美がある。瞬間的に捻られた輪ゴムが、黒い背景に浮いて「曲芸」を演じる、輪ゴムを題材とした写真(2012年、2018年)でも同様だ。我々の日常生活に当たり前のように存在する輪ゴムでさえ、驚くほど生と個性(そう、個性と言って何が悪い)であふれている。小綺麗でシンプルなのに、もつれて複雑な面を持っているのは、人間の人生さながらだ。

松延総司は今回、ザ・コンテナーで「Ghost of Copy」シリーズより新旧両方の写真作品を展示する。照明が落とされ、親密な雰囲気の展示空間を活かした、サイト・スペシフィックなインスタレーションである。滋賀の農村に置く彼の仕事場、スタジオ、周辺の自然、陶芸工房、彼の日常生活に登場するランダムなオブジェなど、様々なものや模様を描いた写真が発表される。彼の言葉を借りると、それぞれ、「反射、反転、反復」を強調する操作がなされている。また、イメージの魅力は、彼の他の作品でもそうだが、モチーフにヒエラルキーがないことと、正負のスペースの欠如にある。松延の制作活動全体に通じて言えるが、何かを定義することを避け、「中間」を捉える力は、ポジティブとネガティブが平穏に共存する抽象の尖点にイメージを創り上げ、被写体そのものではなく、その痕跡を強調する。グレースケールを優先し、デッドスペースを取り除くことで「相似」が写し出されていることも特徴的だ。それはつまり、リアルとバーチャル、具象と抽象、自然と人工、軽さと重さの接合だ。作品中、最も興味深いのは、幾何学的なものと抽象的なもの、自然物と人工物の「中間」が模倣されていることだ。どの正反対の境界も、―白と黒の間を繋ぐような― 美学的な方法によって、距離が埋められている。例えば、農業をテーマとした写真作品は、有機的な形状を一旦彷彿させるが、その模様は他方で、農業の機械化と大量生産を象徴しているのではないか。植物を被写体とした作品では、自然と数学の両方で現れる、幾何学とテッセレーション(平面充填)の模様が意識されており、19世紀後半から20世紀前半にかけ自然の形状と幾何学の関係性を表現したドイツ人写真家のカール・ブロスフェルトへのオマージュでもある。

本インスタレーションでは、ローテクなカルーセル・スライドプロジェクターを使って、「Ghost of Copy 」シリーズより約80枚の写真をザ・コンテナーの後方壁に投影する。この写真は、松延総司が10年以上にわたって考えてきたコンセプトや美学の多くが強調されており、彼の実践が要約されたかのようである。また、反復的なメカニズムで再生されるスライド・プロジェクションはバーチャルなスケッチブックのように作品を文脈化し、哲学的で美しく、生理学的で知的な卓越した物語の表象を可能にしている。

スケジュール

2021年7月26日(月)〜2021年10月11日(月)

開館情報

時間
11:0021:00
休館日
火曜日
土曜日・日曜日・祝日は10:00〜20:00
入場料無料
会場The Container
http://the-container.com/
住所〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-8-30 ヒルズ代官山1F
アクセス東急東横線中目黒駅西口より徒歩5分
電話番号03-3770-7750
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します