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[画像: Zhu Jinshi, Thick Mountains, Thick Water, 2020, oil on canvas mounted on used easel, © Zhu Jinshi]

「Mountains Carrying Suns」

BLUM
終了しました

アーティスト

榎倉康二、石川順惠、ハ・ジョンヒョン、クォン・ヨンウ、李禹煥、小清水漸、中村一美、岡﨑乾二郎、関根伸夫、菅木志雄、柳幸典、朱金石
※現在、Blum & Poeは、アポイント制にて開廊しています。

Blum & Poe (東京)では、榎倉康二、石川順惠、ハ・ジョンヒョン、クォン・ヨンウ、李禹煥、小清水漸、中村一美、岡﨑乾二郎、関根伸夫、菅木志雄、柳幸典、朱金石といった総勢12名の作家が参加するオンラインアートフェアSouth South Vezaおよび、グループ展「Mountains Carrying Suns」を開催いたします。朱の作品タイトルから引用した本展は、当ギャラリーのプログラムの核とも言える東アジアの美術史における活発で横断的な関係性についての再考の起点となるでしょう。

朱の肉体的な制作工程の様を感じさせる立体的に油絵具を用いた彫塑的なキャンバス作品は、作家自身が文化大革命のただ中の北京で従事していた工場労働の過去を我々に想起させるものです。画家として知られる朱ですが、1960年代から70年代に台頭した、天然素材や工業素材を用い一時的でサイトスペシフィックなインスタレーションを生み出した日本人作家たちの芸術動向「もの派」への関心から影響を受けた立体やインスタレーション作品における実験性がその活動初期の作品に見て取れます。「もの派」の中でも、関根伸夫は、野外や屋内に土の巨大な塊や油土を設置した作品群によって物質や空間の脱形態といったトポロジカルな思考を追求した作家です。関根の関心は次第に、モニュメント的な野外彫刻である『Progetto』のプロポーザルへと発展していくこととなります。その作品群は、理論家であり美術家であった李禹煥にも影響を与え、現代美術の文脈における新しい現象学的理論の提唱は、榎倉康二といった作家たちに文脈上のフレームワークを与える契機となったのでした。活動初期には油やグリースによって床や展示壁、野外空間を脱色するインスタレーション作品を制作していた榎倉は、その後綿布や木板にしみを付けた「干渉」と呼ばれるシリーズに着手していくようになりました。菅は、枝、石、縄、ガラス、プラスチックといった素材を巧みに用い、「〈在る状態〉の顕在化」と作家が呼ぶ、空間的、物質的関係性の無限の配置を生み出すアッサンブラージュ作品に取り組むようになります。それとは対照的に、小清水は、幾何学的な切り込みや日本固有の顔料を用いた彩色など、素材に積極的に手を加えたレリーフ作品を生み出してきました。そこには、土着性を持った日本特有の彫刻表現の一貫した追求という小清水の取り組みが顕在しています。

李禹煥は、「もの派」誕生における重要な人物であっただけでなく、母国・韓国の同世代の作家たちにとっても大きな影響を与えてきた存在でした。後に、「単色画」と呼ばれるようになった彼らは1960年当時の韓国美術におけるメインストリームであった水墨画の伝統を乗り越えるためのアプローチを、紙やキャンバスへの継続や反復といった行為によって追求していくようになります。クォン・ヨンウは、墨から離れ、繊細なレイヤーを持つ韓紙の表面を自らの爪で引っ掻く手法によって新たに作品制作を始めました。ハ・ジョンヒョンは、パレットナイフや筆を用い、キャンバスの裏面から油絵具を表面に押し出すことで、現在まで続く「接合」シリーズを発表するようになります。李の導きによって、単色画の作家たちは定期的に東京で発表する機会を得るようになり、「もの派」や日本の前衛作家たちと同時代的な交流を持ったのでした。

「もの派」以降の1980年代から90年代にかけて活動を始めた日本人作家たちは、新しい時代に呼応する表現を獲得するためのオリジナルな方法を模索していくようになります。彼らは、前時代の作家からの影響、あるいは批判的な態度とともにそれぞれ新しい表現に取り組んでいったのでした。中でも、石川や中村といった作家たちは、社会に対する意識を持った絵画制作というアプローチによってアメリカやヨーロッパのネオ・エクスプレッショニズムと並行して生まれた日本におけるニュー・ペインティングの文脈と関わってきました。石川は、雑誌や新聞広告から見つけた形態をキャンバス上に拡大、投影し、トレースした初期作品によって、バブル経済が花開いていた当時の消費文化へのささやかな批判を投げかけています。さらに、中村は、自身の幼少時代や母親の死別といった出来事についての隠喩から1995年に阪神淡路大震災後の社会状況に至るまで、私的かつ社会的な事象を参照としながら、自身の抽象性をキャンバスにおける自律性を超えたものとして発展させてきました。一方で、造形作家として、また批評家として、『抽象の力』の著者としても知られる岡﨑は、絵画、彫刻、レリーフ、立体作品、ロボットとの協働によるドローイングといったジャンルにとらわれない幅広い創作活動を行ってきました。特にパンデミック下にあった2020年には、時代や場所を超えた旅に誘う『TOPICA PICTUS』と名付けた絵画シリーズに集中的に取り組んでいます。さらに、柳幸典は多様な媒体を通してナショナリズム的なポリティクスや制度化された境界といった事象を問いただす作品を生み出してきました。国旗をモチーフにしたアント・ファームの作品では、蟻たちは、自身の住処とする「国々」を象った砂箱を掘り進めていきます。本展では、パワフルでシンボリックな日の丸という象徴が蟻によって撹乱された様子を見ることができます。

当ギャラリーは、長年その展示企画を通して東アジアの現代美術と共に歩んできたと言えます。創設者であるティム・ブラムは、90年代初頭の東京での数年間のディーラーやキュレーターとしての経験から、日本人作家を国外に紹介していくことを1994年の開廊からの重要なミッションとしてきました。それ以来、様々なキュレーターたちと共に美術史上での再考を試みてきた美術館規模での展覧会の開催を通じて、戦後の美術動向である「単色画」の韓国人作家たちから、日本の「もの派」といった先駆者たち、80年代、90年代に登場した「もの派」以後の実験的な美術表現に取り組んでいった世代の作家たちに至るまで多くの作家たちとの関係を築いていくこととなりました。2014年には当ギャラリーの所属作家の1/3を占めるアジアを拠点とする作家たちのさらなるサポートを目指し、東京に新たなスペースをオープンしました。東京スペースの開廊から6年あまりが経った今、オンラインと展覧会によって開催されるSouth South Vezaにおける本企画は、12名の作家たちによる多様な取り組みを紹介するものとなるでしょう。

さらに、Blum & Poeは、東京を拠点とするタカ・イシイギャラリー、Take Ninagawa、無人島プロダクションとともにコラボレーション企画を開催いたします。Blum & Poe東京では、「Mountains Carrying Suns」とあわせ、大竹伸朗と風間サチコの作品群を2月26日より3月19日まで展示いたします。

スケジュール

2021年2月20日(土)〜2021年3月19日(金)

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
備考
事前予約制
入場料無料
展覧会URLhttps://blumandpoe.com/exhibitions/mountains_carrying_suns
会場BLUM
https://blum-gallery.com/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森 5F
アクセスJR山手線原宿駅竹下口より徒歩1分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅2番出口より徒歩2分
電話番号03-3475-1631 
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