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[画像: ソワマドゥ・イブラヒム 「Better late than never」(2021) acrylic on canvas 120.0 x 90.0cm]

ソワマドゥ・イブラヒム 「Farewell Savane」

KOTARO NUKAGA(六本木)
終了しました

アーティスト

ソワマドゥ・イブラヒム
ソワマドゥ・イブラヒムは1989年フランス⽣まれ。その後、アフリカ⼤陸東南部のマダガスカル島とモザンビークの間にある、コモロ諸島最⼤の島、ンジャジジャ島で10歳まで過ごしました。⼩さな島での⽣活で養われたのは、社会経済学的な視点からのコミュニティ連携の強さ、複雑な⼈種問題への眼差しです。フランスで⽣まれ、親戚が今も暮らすコモロ諸島から遠く離れたフランスで10歳以降を過ごした経験から、アフリカに根ざした⾃⾝のルーツの寄りどころのなさが制作のベースになっています。

コモロ諸島は、今回の展⽰作品《Jardin next door》に出てくるようなバナナや椰⼦の⽊が⾄る所に⽣い茂る美しい島で、その光景を⾃⾝の絵画の背景に取り込みながらイブラヒムは制作をしています。絵画の中の登場⼈物は、旅⾏中やふとした時に⾃⾝で撮影した、今はコモロ諸島で離れて暮らす家族や友⼈など、⾝近な存在の⼈々。これらのアーカイヴ写真に、⾃⾝の記憶や時に想像を交えて絵画を描くことで、誰もが持つ故郷へのノスタルジー、普遍的な家族への愛情やコミュニティの絆を表現しています。例えば《MP3 Files》に登場するイブラヒムの従兄弟が携帯電話を使⽤していますが、海を越え遠く離れて暮らす家族との唯⼀の⼤切な連絡⼿段である、モバイル機器に対する⼤⼩問わず誰にも起き得る愛着や中毒性を表象しています。本展のメイン作品《Better late than never》のタイトルには、「さようならを⾔うのに遅すぎることはない」という意味が込められています。この作品は、イブラヒムの叔⽗が、病気で亡くなる⺟に別れを告げに、故郷より遠く離れた地から彼にとって⼤切な「サバンナ」であるコモロに帰ってきたところを描いたものです。叔⽗は⺟の最期を看取ることは出来ませんでした。しかし、本作のタイトルは、たとえどんなに離れていても駆けつけようとするその気持ちや⾏為こそが重要であるというイブラヒムのメッセージを伝えます。かすかな笑みを浮かべ、表情を隠すようにサングラスをかけた彼は、「これから起こることは私が何とかするから⼼配しないで」と⼒と⾃信を振り絞って⺟に語りかけているかのようです。

⾝近な⼈々の⼈⽣の、あらゆる場⾯を描写したポートレイトとコモロ諸島の美しい⾵景、時にはその⼈らしさを補完する背景や持ち物を想像上で組み合わせることで、⼈⽣のシンプルな喜びを⾒出す豊かさを表現したいとイブラヒムは⾔います。それぞれの個⼈の特徴を⾒つけ出して巧みに捉え、忠実に再現することこそが彼が絵を描き続けている理由であり、例え遠く離れた場所にいても⾃⾝のルーツに⽴ち返ることで、どこにでもある⾃然の美に焦点を当て、アイディアを強化し、⾃分らしくいさせてくれる⾏為なのです。また、真っ直ぐで太い⾝体的なストロークとヴィヴィッドな⾊使いには、⼤学で学んだデザインの知識やノウハウが活かされており、記憶の持続性や記憶を保持し続けることの⼤切さを私たちに教えてくれます。

今回の展覧会タイトルとなった「Farewell Savane」は、イブラヒムが普段絵画を制作する際にリラックスするために聞いているマリのミュージシャン、アリ・フォルカ・トゥーレの最後のソロアルバムに収録された『Savane』という曲にインスパイアされて付けられました。トゥーレは⾔います。「砂漠を歩いていると、豊かだったサバンナが⼲ばつによってどのように破壊され砂漠に姿を変えてしまったか、思いを馳せ⽴ち⽌まる。砂漠には緑も草も⽊もない。しかし、他のどの国に⾏こうが私の知るサバンナに敵う⼟地はなかった。この気持ちを表現するにはどうしたらいいのか」と。これに呼応するように、イブラヒムは続けます。「タイトルの『Farewell Savane』の背景には、私たち誰もが持つストーリーと懐かしい⾵景があり、それに触れるときに感じる⼼地よさがある。どこかへ旅に出ようと、旅先で出会う味や匂い、⾵景が私たちのアイデンティティをより強固なものにし、郷愁を誘う。」と。誰もが持つ郷⼟愛や家族や友⼈への普遍的な思いは、⼈種や主義・主張を越え、私たちを分断から⽴ち返らせる⼿段になり得るのでしょうか?ぜひご⾼覧ください。

[関連イベント]
トークイベント「ブラック・アートの多様性とそのグローバルな展開」
日時: 12月18日16:00〜17:00
登壇者: 山本浩貴、小池藍、額賀古太郎
※イベント詳細・お申し込み方法は公式サイトよりご確認ください。

スケジュール

2021年11月4日(木)〜2021年12月18日(土)

開館情報

時間
11:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
会場KOTARO NUKAGA(六本木)
https://www.kotaronukaga.com/
住所〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 2F
アクセス都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅1a・1b出口より徒歩1分
電話番号03-6721-1180
関連画像

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