オードリーはフランスに生まれ、01年より日本に移り住み、以来、東京で意欲的に表現活動を続けています。ペインティングやコラージュ、インスタレーションなど、多岐にわたる表現形式を用いながら、常に新しいアイデンティティを発表してきました。同時にインディペンデントマガジン『TOO MUCH MAGAZINE』の編集者・アートプログラムディレクション、また、子どもたちにアートの楽しさを伝える『アカデミー・ボンポワン』のプログラムディレクションも担当するなど多彩な顔を持ちます。
新作展では、哲学者ライプニッツのモナド論での言葉『The best of all possible worlds』からインスパイアされたテーマをタイトルに据えています。ライプニッツは「いかにこの世界が混沌として見えようとも、そこには神によって調和、統一性が保証されており、現実世界は可能なすべての世界の中で最善のものである」と唱えました。この考えは昔も今もオプティミズムすぎると批判もありますが、数学者でもあり論理的思考者であり、機械や科学を探求していた彼が、宇宙をより高度な創造物として理解しようとしたことに、オードリーは今あらためてたくさんの魅力を感じています。展示タイトル「best」の斜線にはライプニッツの言葉に彼女のアイデンティティを重ねて、比較の価値ではなくそれぞれの人が今、自由な形容詞で世界を感じれたらという希望のメッセージを込めています。