終了した展覧会・イベントです

石﨑朝子 + 大石一貴 「路上のマチ」

WALLA
終了しました

アーティスト

石﨑朝子、大石一貴
本展は、彫刻家の大石一貴と、美術作家の石﨑朝子による二人展です。2021年3月の武蔵野美術大学卒業制作展において、石崎は渋谷という日本有数の繁華街を舞台に、路上に面して展開されるタグ(=tagging、グラフィティの一種、主にライターのサインを示す)に焦点を当てた作品《都市の表面を繋げて歩く》を発表しました。特定のカルチャーへの呼び水となるグラフィティですが、石﨑はタグの描かれる壁、石﨑曰く「面(めん)」を上空の鳥からの俯瞰した地上の線、はたまた路上の虫からの仰視された上空のアウトラインとして捕捉し、空の色としての鮮やかなブルーの色彩イメージを用いて、都市の他なる視点に再構築しました。街で折り重なって掲げられる広告やサインによる絶え間ないアフォーダンスに対し、意味を初めから含まないかのようなタグは、都市という景観における一種の「文字化け」とも言えます。石﨑は薄厚の鉄板にブルーの塗料とタグをレイヤードさせ、それらを蝶番でつなぎ合わせることにより、空と地上から折り重なりあう都市の文字化けを形作りました。俯瞰と仰視によって生まれたその奇妙な蛇腹の地図は、渋谷という地理的にも建築的にも起伏の激しい渋谷という街の新たな等高線を見ているかのようです。それは街の文字化けというエラーを「面」で捉えることによって見えてくる存在しない路上の断面であり、解読された街の側面として提示されているのです。

大石は物質や物事を組成する要素や現象をメディウムとした彫刻、映像、インスタレーションを制作し、それらの組成に起因されたナラティブな空間の実態を検証してきました。2021年1月に開催された藤沢市アートスペース(以下、FAS)での展示では、湘南を所在とする「砂」「埃」「湿度」を彫刻を組成するマテリアルと仮定することで、それらにまつわる空間の微細な相関関係/因果関係を「石碑」をモチーフに生の粘土を用いたインスタレーション《誰か。が砂の出生やヒストリー…》を発表しました。FASの学芸員、鎌田さつき氏は展示記録集で大石作品をこのように解説しています。「野外で私たちがよく目にする石碑には、土地の由来や歴史的事件、街に貢献した偉人を称える文言などが残されている。しかしーもっと小さな出来事(風が吹いたら桶屋が儲かる)を石よりも弱い粘土という素材を使い”弱い碑”として残してもよいのではないか。ーー素材やそこに刻まれた物事の意味を問う大石の制作に対する姿勢が表されている。」ーーー大石がマテリアルから見つけ出す物事は、実証し得ないほど極小の出来事であり、淡さとは異なる弱い出来事だとも言えます。
「物事の大小とは一体なんだろう、そして一挙一動がどんな結果を引き起こすのだろう。ー様々な問いかけが自分の中に生まれてくるーそんな問いを誘発する力が、大石の作品には感じられるのだ。」と、解説は締めくくられています。

二人は共通して「路上」において、制作の対象への執拗な疑いと変換が行なわれているように思われます。1986年に赤瀬川原平、藤森照信らによって結成された「路上観察学会」が探し求めていたのは、路上で見過ごされた現代だったのではないでしょうか。石﨑と大石は現代の路上で何を探しているのか。されうる対象や形態では成り立たないであろうそれは、『都市の表面を繋げて歩く』で形象化されているような、都市に織り込まれた立体感、「マチ(襠)」の裏側にいるように思えます。ストリートの蛇腹状のマチを開いては閉じて、ほろりと溢れてくる路上の現代を探る展示企画です。

スケジュール

2021年9月17日(金)〜2021年9月26日(日)

開館情報

休館日
イベントにより異なる
備考
開廊時間 11:00〜19:00
入場料無料
展覧会URLhttps://walla.jp/upcoming/depth_of_street/
会場WALLA
https://walla.jp/
住所〒187-0042 東京都小平市仲町615-29
アクセス西武多摩湖線青梅街道駅より徒歩10分、西武多摩湖線一橋学園駅北口より徒歩10分、JR武蔵野線新小平駅より徒歩17分
関連画像

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