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[画像: Christiane Pooley Summer, 2021 27 x 22 cm]

クリスチャン・プーレイ 「Distance」

Gallery 38
終了しました

アーティスト

クリスチャン・プーレイ
現実と夢の境界線で揺れ動く抽象的な風景の中で、顔のない人物が現れては消える。これは、物理的環境としての「場所」と、時間や地理的な境界を超えた感情的な状態としての「場所」を探求するクリスチャン・プーレイのペインティングです。 東京・Gallery38での初個展となる本展において「 Distance 」と題し、転位と不在の概念をテーマにした新作を発表いたします。

プーレイの作品は、彼女自身の場所の探求に深く根ざしており、同時に自身の出身地の複雑さについても写し出しています。彼女はチリ南部のアラウカニアで生まれ育ちました。19世紀後半に軍事的占領と植民地化によって国の領土となったアラウカニアは、それ以来、新たに構築されたチリのアイデンティティに強制的に同化させられた先住民と入植者との間で未だ対立が続いており、アイデンティティ、土地の所有権、帰属意識をめぐる複雑な議論を引き起こしています。

プーレイは自身の家族の記録写真を用いることで、鑑賞者に親近感を沸かせ、対立を煽ることなくチリの複雑な歴史を提示します。「友人や家族、家から物理的に切り離されたり、過去の記憶と現在の間にある空白など、私たちと距離との関係性に興味があります。」とプーレイは言います。今回のシリーズでは、物理的な繋がりがない中で、テクノロジーを使ってどのように人間関係を構築していくかという点に焦点を当て、パンデミックの継続的な影響についても言及しています。ペインティングの縦長の構図は、ビデオ通話、メッセージ、ソーシャルメディアなどに限らず、親密な関係を築くための一種の入り口となりつつある携帯電話の画面を連想させる一方で、絵の具の物質性と目に見える筆跡はその身体的な存在感を想起させます。また、保存された画像は、描く過程で抽象化され、作家の記憶や経験と融合して、人物や風景が重なり合い、互いにぼやけて、時には消去されてしまうような詩的で、不確実な空間を作り出しています。例えば、「Summer」と題された作品では、2人の子供が緑色の筆跡に半ば飲み込まれているように見えます。作品のタイトルと柔らかな色調が場面への理解を誘導しますが、特定の文脈や時間性を排除することで、更なる感情移入を促しています。

多くの作品には魅力的な優しさや憧れが感じられますが、決してロマンチシズムやノスタルジーを表現した作品ではありません。鮮明で具体的なディテールと抽象的な要素のバランスが、心地よい緊張感と少し不穏な雰囲気を醸し出しています。例えば、「Behind the hill」は、超現実的で鮮やかな赤い三角形が地平線上に描かれた暗い空に向かい、馬に乗った人々が灰色の山の間の小道を列をなして通っています。マーク・ロスコの構図に影響されたこの作品は、さまざまな表現方法を重ね合わせ、慎重に色を使用することで、空間的かつ感情的に奥行きを追求しています。その他の作品でプーレイは、複数のキャンバスに繰り返し描かれたイメージを用いて、様々な抽象を追求し、作品の背景や絵画の可能性を観賞者に問いかけます。 「私にとって繰り返しのプロセスは、批判され歴史から抹消されそうなアイデンティティを主張する方法なのです。」

プーレイの作品には、鮮明で親密な記憶の片鱗が消えていく過程で途切れているような、緊張感がありながらも心に残る美しさが表現されています。
※本展示は「ART WEEK TOKYO」に参加しています。

スケジュール

2021年9月23日(木)〜2021年11月14日(日)

開館情報

時間
12:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
備考
月曜日・火曜日・祝日は休廊、9月23日は開廊
入場料無料
会場Gallery 38
http://www.gallery-38.com/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-30-28 原宿ホームズ101
アクセス東京メトロ副都心線北参道駅2番出口より徒歩6分、JR山手線原宿駅竹下口より徒歩8分
電話番号03-6721-1505
関連画像

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