このたびNANZUKAは、東京都在住のアーティストHaroshiによる個展「I versus I」を、渋谷神宮前の新ギャラリーNANZUKA UNDERGROUND にて開催致します。2017年「GUZO」、昨年の夏に2Gと3110NZにて同時開催をした「FREE HYDRANT CO」、「1:1」 に続く新作による個展となります。
Haroshi は、2003年より独学で習得した技法を駆使し、スケートボードデッキの廃材を使った彫刻作品、インスタレーションを制作しています。故キース・ハフナゲルのストリートブランドHUFとのコラボレーションや、BATBのトロフィーなどを通じて、現代のストリートカルチャーの深層を体現する数少ないアーティストの一人として、絶大な支持を集めています。2018年には、Art Basel Miami BeachのNOVAセクションにおける個展、2019年から2020にかけてJeffrey DeitchのNYとLAを巡回した「Tokyo Pop Underground」にて、この展覧会を象徴する5m四方の大作のインスタレーションを発表し、大きな話題となりました。
Haroshiの作品を理解する上で、「ストリートカルチャー」の起源と現在の複合的な「ストリート」の語彙について語らないわけにはいきません。"Street Culture”とは、1970年代に、NYのブロンクスで、ラップ、ブレイクダンス、DJ、グラフィティといった遊びが発展して生まれた「ヒップホップ」と、LAのドックタウンを拠点とするZ-BOYSというチームによって、プールスケーティングやエアーランディングといった革命的なスタイルが齎された「スケートボード」シーンを同時に象徴する言葉とされています。ここで重要な事は、このカルチャーの担い手が、人種的・性的なマイノリティやドロップアウトしたキッズといった人々であり、上位社会における価値規範に対抗した、独自の価値観や行動様式、言語を育むという創造性に根ざしていた事です。やがて、この”Street”という言葉の意味は、“PUNK“のイデオロギーとも融合しながら熟成して成長し、「信念を曲げずに生きるカッコ良さ(real)」、「バトルの精神(beef)」、「自分で生み出す(DIY)」、「仲間を大事にする(my men / homie)」といった哲学的な意味を含む言葉として定着するようになりました。振り返って、Haroshiの作品を捉える時、そこに見えるのは、自らが育った、こうしたカルチャーへの実直なリスペクト(尊敬)であり、また揺るぎないスケードボードへのひたむきな愛情です。Haroshiが、自ら使い古したスケートボードで作品を作ろうと決めた時、そこにまず最初にあったものはスタイルではなく、熱情であり、その事実がHaroshiの現在に至る全ての創作活動を支えているのです。
Haroshiは、本展に寄せて自らの作品について次のように解説しています。
「Mosh Pitは、役目を終えたスケートボードの傷ついた美しい姿にフォーカスした作品です。スケートボードのグラフィックは、スケーターの繰り出すトリックによって各々の形に傷ついて(ペインティングされて)、その美しさは完成形に向かい、と同時に、終局にも向かっていきます。まるでMosh Pitのようにスケーターのぶつかり合うようなパッションを、その結晶でもあるスケートボードによってそのまま作品に閉じ込めたのです。GUZOはスケーターを支えてきたスケートボード自体の自己犠牲の精神を尊いものとし、それを神格化した神像です。スケートボードの傷ついていく様は、まるで “ the passion of the skateboard “ といっても良いような、ドラマチックなもので、僕らの代わりに傷ついていくスケートボードを神様として復活させなくてはと思いました。ソフビのシリーズは、子供の頃に僕らの手によって砂場やお風呂場で繰り広げられた激しい死闘の末、傷だらけになり破損したソフビ人形達を、大人になった僕らが今、またコンクリート上で激しい死闘を繰り広げ、深手を負わせたスケートボードによって修復し、傷ついた両者がお互いの足りない部分を補いながら、新たな形に進化していく物語です。」