神奈川県立近代美術館 鎌倉日本におけるフランシスコ・ゴヤ・イ・ルシエンテス(1746年-1828年)の芸術の本格的な紹介は、1971年の「ゴヤ展」(国立西洋美術館)から始まります。それから35年、ゴヤのイタリア滞在期(1770年-71年)の新しい資料の発見などもあり、ゴヤに対する見方も変わってきました。重病(1792年-93年)による全聾とその孤独から幻想的な作品を描き、戦争と混乱から革命的な作品を描くようになったというイメージの強い画家ですが、一方では、新古典主義にいち早く対応して王立タピスリー工場のために風俗描写の下絵を描いて頭角を表わし、貴族や知識人の粋な肖像画を経て1826年まで、スペインの宮廷画家として成功を収めていました。
神奈川県立近代美術館は、ゴヤのふたつの版画集、『気まぐれ』(1797年に着手、初版は1799年2月にゴヤが80点のセットで販売)と、『戦争の惨禍』(1810年に着手、1815年頃完成、初版はゴヤ没後の1863年3月に王立美術アカデミーが80点のセットで出版)を所蔵しています。これらには、アクアチント(1770年頃に発明された、耐酸性の粒子で銅板を覆って粒子と粒子の隙間を腐食させ、ハーフトーンを表現する技法)やラヴィ(酸を筆で直に銅板に塗りつけて腐食させ、水彩のような効果を得る技法)といった新しい技法が取り入れられています。これらの版画を通して、複雑で進取の気性に富むゴヤの創作を改めてご覧いただきたいと思います。
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