川崎市岡本太郎美術館岡本太郎は1975年に『にらめっこ』と題したエッセイ集を刊行します。また、80年と81年には『にらめっこ問答』『人生は夢 にらめっこ問答』として、当時の若者が太郎に悩みをぶつけ、それに対する回答をまとめた本も出版されました。その他作品のタイトルとしても使われる「にらめっこ」とは、岡本にとってどのような意味があったのでしょうか。
最初に出版された『にらめっこ』のエッセイのなかに、岡本が青春の孤独をかみしめていたパリ時代、陰鬱な気分で植物園にでかけ、その片隅の小さな動物園に訪れた際の出来事が「にらめっこ」として収められ、おりの前でヒョウと対峙する若き日の岡本の姿が描かれています。「その暗くやきつく眼に、私の全身の孤独感が、青い炎のように燃えあがった。言いようのない共感と憎悪が、天地でたったひとりの相手として集中する。私はにらみつけた。険悪な、異様な対峙。(中略)生命の瞬間のぶつかりあい。その濃い交歓に全身がひらいた。」ここで描かれているように、「にらめっこ」とは人と獣との生命の瞬間のぶつかりあいであり、さらには『にらめっこ問答』に使われたように、人と人との、あるいは自分自身との生命の瞬間のぶつかりあいと、そこで交わされる生命の交歓を象徴する言葉だったのかもしれません。
今回の常設では、「にらめっこ」と題し、作品の中に描かれた生命のぶつかりあい、そして作品を見る私たちをにらみつけ、生命のエネルギーをぶつけてくるような岡本作品をご紹介します。
[画像: 「手の顔」(1978) 油彩、キャンバス]
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