ギャラリー美術世界1973年、キャルアート大学院ペインターコースの最初の卒業生は、ロス・ブルックナーと坂口登の二名であった。その年アメリカ軍がベトナムから撤退、その二年後にベトナムは統一された。彼らは世界各地で続く戦争での経験から、精神世界を深く掘り下げ、ニューペインティングとして多くのアメリカ人の共感を呼んでいった。キャルアートにはその後デビッド・サレーたちのグループが続き、ネオ・エクスプレッショニズムとして世界的な潮流となった。コンセプチュアルアートやミニマリズムへの対比として登場したこの運動は明らかに現代美術の今へと繋がっている。
その後、ニューペインティングの活動の中心軸となっていたアーティスト達が新たな活動の場をアジアに求め、東洋の精神性に活路を見出すなど一気に多様化の様相が始まった。95年のホイットニービエンナーレでは「『美』と『感性』の復権」が取り上げられ、以来いわゆる安直なインスタレーションに対して美を追求するペインターたちの勢いが巻き返していくことになる。その現代美術の最先端に坂口登は位置する。
芸術は、時代を切り開き社会の必然として生まれる。アメリカで始まった現代絵画はアメリカ社会に深く根付きながら道を切り開いてきた。社会が積み上げていった流れを体験しないで出来上がった作品には訴求力がない。情報だけを収集して流行を追いかけている姿に未来は無いのだ。坂口登の作品は「スプラッシュ」と「抽象と具象の二連画」が特徴として注目されてきた。しかしこれは、流行を追いかけたのでもなく奇をてらったものでもない。12歳でアメリカに移住し、日本との二つの故郷の狭間で、アーティストとして、東洋人として、生きぬき、もがき、自らの内奥を探しつづけた結果として得た必然なのだ。それは宇宙からの賜物といっても過言ではないだろう。今、坂口登は、ハワイのアトリエを充実させ、ニューヨークと交互に作品を制作している。その結果、具象画の画面は眩いばかりに透明度を増し始め、スプラッシュとの融合はさらにその意義を深めつつある。東京で新たなる出発を期してから三回目の個展である。更なる宇宙との融合を鑑賞者のハートでしっかりと確かめていただきたい企画である。
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