小山登美夫ギャラリー六本木ディエゴの作品はキュレーターのドミニク・モロンによって以下のように評されています。「自画像としても機能している想像的別世界を作り出し、芸術の伝統が持つ可能性をラディカルに押し広げつつあるー作品は鑑賞者を作家の自己神話的な策略へと誘い込み、現実に構築されたセルフアイデンティティーと、架空の魔法とを隔てる境界はこの上なくアンウ゛ィバレントである。」
『インディレクトマン』では、これまでモダニストたちが語らい、マスメディア言語がとりあげてきたものを統合的に構築する役割として自画像が登場します。ペインティングは、色彩として、またサインとしても、全て黒を主要素として用いています。夜の光景であるかのように顔やフォルムは抽象的になり、題材はズームされ、切り取られ、描かれた目は動き出し、グラムロックやドラッグカルチャー、ホームレスの様相を引用しながら増殖していきます。一方直接的で、やりすぎなアンドロギヌス(両性具有)や悲劇の雰囲気を漂わせたダイレクトな表現は回避されています。いくつかの作品においては、キャンバスはビニール袋のように、ほとんどオブジェのような形をしています。マスクや、ミニマリストが用いるようなネオン構造と二つの目、口が、クローズアップされて描かれる作品もあります。自画像が描かれた全ての作品は、「認識ではなく推測の対象、即時的で当然の直感ではなく、文化の対象」(注1)です。シンのプロジェックトにおいては、自画像として描かれた像もまた自画像画家その人も、常に仮想の人格をとどめており、作家にパフォーマンス的な役柄を与え、鑑賞者は提案されたヒントを読み取ることで、物語を紡ぎ出します。
本展では、等身大でほぼ裸の(手袋とベルトだけを身に着けた)男性の彫刻も出展されます。それはいかにも伝統的な彫刻のポーズで腰掛けています。そのプロポーションに対して大きすぎる頭は、バロック風のかつらにもロック歌手のヘアスタイルにも見えますが、ペイントされた鉄のスティックによって、不安定に支えられています。
注1)ジャック・デリダ「Memoirs of the Blind, the self portrait and other ruins」ルーブル美術館、1990年より引用
オープニングレセプション: 4月28日(土) 18:00~20:00
まだコメントはありません