LIXIL ギャラリー 1 & 2田淵裕一(Tabuchi Yuichi)さんの作品は385×280×35mmの箱の中に、モノクロ写真、ワイヤーワークのひとがた、幾何学形態の立体が閉じ込められています。
モノクロ写真には、海岸、雪景色、墨のにじんだ看板、風雨にさらされた木壁などの風景の中に置かれたひとがたが写っています。そして、余白には「姿なき客人(まろうど)ふえゆく八月は死の量(かさ)にまで水位上がれり」などの、短歌が書かれています。
モノクロ写真も田淵裕一さんの撮影ですが、写真と人魂にも見えるワイヤーワークのひとがたの組み合わせは、古いアルバム写真の遠い記憶の面影のようで、見る者はどこかへ連れ惑わされたような、もの哀しく、でも何か深く静謐なものに満たされた感覚を味わう作品です。
田淵裕一さんは美術系出版社での編集者を経て、1980~90年代にエディトリアルからグラフィックまでこなすデザイナーとして、多くの作品を手がけてきました。同時にデザインの仕事の傍ら彼自身の発露として、独自の写真機による、「TABTYPE」と命名した、線による抽象写真とも言うべき作品をひそやかに制作してきました。2000年頃に生業を退いた後は、本格的に作品の制作を始めます。
そのきっかけが上記の歌人・光栄堯夫(みつはな たかお)との出会いでした。2003年に歌集「姿なき客人」の装丁を行った時、田淵さんはいつものように表紙をデザインする作業の一環としてオブジェを制作します。先の短歌は八月の盂蘭盆会という、今は姿なき客人が数多く訪れるという仏教行事をモチーフにしています。田淵さんは手づくりで、ワイヤーをメッシュのようにランダムに幾重にも編み込み、この「客人」をつくりました。
アーティスト・トーク 2008年9月1日(月) 18:00~19:00
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