スイッチ ポイント彫刻、何処でもない場所のカケラ
Sculpture , a fragment in the place that there is nowhere
「彫刻、何処でもない場所のカケラ」 と題して行われる本企画では、第2回に利部志穂を迎えて個展が開催されます。現代において芸術とは、固有のジャンルがより拡散していく傾向にあり、絵画、彫刻といった定義はますます曖昧になっています。むしろそれらの概念は、今や意味を失効し、何ものをも意味しえないともいえるかもしれません。そのような各ジャンル間の脱境界化という状況にありながらも、本企画においてはあえて彫刻への問いかけがなされます。固有の場や意味といった、伝統的な彫刻がもちえた要素を次々と喪失し、断片化されていった彫刻。そのような、まさしくカケラと化しながらも無名の場所において立ち現われてくるのは、彫刻という名の亡霊かもしれません。この「彫刻のようなもの」としか言いようのない現象について、先鋭的な活動をしている作家の作品を通して考察することは、必ずや私たちを彫刻の「源−点」へと導くことになるでしょう。
利部志穂は、これまで廃材を解体−再構築する手法を用い、鉄パイプや木材をグリット状に構成することで、きわめて建築的要素の強い作品を制作してきました。今夏に行われた 「所沢ビエンナーレ美術展 『引込線』」で発表された《281/昼夜》(2009)は、引込線の線路に沿いながら全長が85mにも伸長された巨大な立体作品でしたが、そこで作家に強く意識されたのは、これまでいくどか言及されてきた「通過」の概念でした。本展においては、作家によって日常的になされる無目的的な街の徘徊により廃材と出会う探索行為と、鑑者の鑑賞行為としての歩行が生み出す持続的な体験が重なりあうことで、視覚だけではない物質に対する身体的な認識のありようが問われることとなります。彫刻をつくることに常に自覚的な利部によって変質される展示空間は、「彫刻のわからなさ」に起因する彫刻のある見方を提示する可能性を秘めているといえます。
森 啓輔 (本展企画者)
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